想像を絶するブラックぶりに戦慄…キャリア20年超の現役アニメーターが描く、新人時代から経験したアニメ業界のリアル【書評】

マンガ

公開日:2025/6/24

「アニメーターになりたい」と夢見たあの日。だけど、夢を叶えたその先にあったものは……。

憧れのアニメーターになったら超絶ブラックでした』(竹書房)は、キャリア22年の著者・いとうまりこ氏が、念願叶ってアニメーターになった2002年から、2013年頃までの経験を描いた衝撃のコミックエッセイだ。

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 アニメが好きで、絵を描くのが好きで、「好きなことを仕事にしたい」と飛び込んだ業界。しかし待っていたのは、超安価な業務単価、終わらないスケジュール地獄、始発帰り、遅れがちな給料払い、という目を覆いたくなるような過酷な現場だった。

 とはいえそこはシリアスにならず、デスクには推しグッズとゴミが山積み、天気の悪い日は出社率が激減する、といった思わずクスッとしてしまうアニメーターあるあるを織り交ぜながら、ギャグマンガのようにコミカルに描いているのが本作の大きな魅力である。

 文化として全世界から注目されている日本のアニメ。作品はキラキラと輝いているのに、その裏側でクリエイターたちが置かれている環境は、少なくとも本書で描かれた当時はあまりにも厳しい。

 夢を追い、叶えることは本当に素晴らしいことだ。しかしそれが「やりがい搾取」にすり替わってはいないだろうか。仕事が好きで頑張っているうちに、いつの間にか自分をすり減らしてはいないだろうか。

 本書はアニメーターという職業の知られざる裏側を笑いとともに教えてくれると同時に、「働くとは」「夢を叶えるとは」ということも問いかけてくる。今働いている人はもちろん、これから社会に出る人に、ぜひ手にとってもらいたい一冊だ。

 最後に、今後も素晴らしい作品を私たちに届け続けていってもらうために、アニメ業界の労働環境が本書の頃よりも改善されていることを願ってやまない。

文=ネゴト / すずかん

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