金をたかる母親、女遊びばかりの父親…毒親の呪いを断ち切れない姉弟それぞれが抱える、苦悩と葛藤の行方は?【書評】
公開日:2025/6/25

毒親とはできる限り距離を置くべきだ。理不尽な要求をしてきたり支配的な行動を見せたりして子どもを傷つけるならば近づく必要はない。しかしたとえ離れて暮らしていても、その影響から完全に逃れることは実際問題として難しい。『毒親育ちの結婚』(高嶋あがさ/竹書房)はそんな毒親の存在に悩まされる人に手に取ってほしい作品だ。
本作の主人公は毒親家庭で育った中島望。実家は長年ゴミが放置されたままの、いわゆるゴミ屋敷だ。その中で娘と息子の幸せを奪い続けた母親は、成長し働くようになった子どもに金を無心し続ける。かたや父親は子どもたちが小さい頃から女遊びを繰り返し、子どもが成人しても風俗通いをやめなかった。そんな家庭環境に苦しんだ望は、両親から逃れるために一人暮らしを始める。しかし距離を置いても母親は勝手に望の家に入り生活用品や食品を持って帰る。こんな両親だから望は結婚というものに希望を見いだせず、アラフォーになっても独身という選択をしている。
望は可能な限り距離を保つことでなんとか精神的な安定を図っているが、結婚を選んだ弟は自分だけでなく妻や子どもも守らなければならない。裕福な家庭で育った弟の妻・千里は、義理の両親の外見や振る舞いに当初から違和感を覚えていた。結婚は夫婦ふたりのものだと信じ、愛する人と人生をともにする決意をしたのだが――。
どんなに距離を取っても親の干渉は止まらず、勝手に住所を調べどうにかして接触しようとする母親の影がつきまとうなかで、それでも姉弟は自分たちの人生を立て直すための方法を模索し続ける。
血がつながっていようがいまいが、親のすべてを許容する必要は一切ない。親との向き合い方に悩んだときに、本作はどう考え、どう行動すべきかのヒントをくれる。
文=ネゴト / くるみ