介護ありきの同居は地獄への入り口。かつて、とんでもない嫁いびりをしてきた義母が認知症に【著者インタビュー】
公開日:2025/6/19

自身が受けた姑からの壮絶な嫁いびりの記録を「毎日が発見ネット」で連載していたかづさん。その連載が好評を博し、漫画化されたのが「義母クエスト」シリーズです。年上男性・秋彦さんから強く求婚され、結婚を決めたかづさん。しかし秋彦さんの母は結婚に猛反対。秋彦さんは母親よりかづさんを選ぶと言い、両親と縁を切って結婚。ふたりは幸せな夫婦生活を送るはずが……。
義母のかづさんへの想像を超える嫁いびりの数々と、かづさんのへこたれない不屈の精神が見どころの『義母クエスト 〜結婚したらいきなりラスボス戦でした〜』『義母クエストリターンズ 〜ヤバすぎる義母との負けられない30年戦争〜』(ともにかづ:原案、赤星たみこ:漫画/KADOKAWA)。当時のリアルな心境から後に認知症となった義母とのその後、自身も義母となった現在の生活まで、原作者のかづさんに伺いました。
――夫婦で応募したつもりだった市営住宅の応募先が、ご主人の手によって勝手に義実家の近くに変更されていたというエピソードが衝撃的でした。
かづさん(以下、かづ):私も「この親子はこんなことまでするのか!?」と思いましたね。結婚当初住んでいたところは実家の近くだったので、実家から遠いところに引っ越せば嫁の親はしょっちゅう来られないし、車の免許もなく、自由にできる金もない嫁は実家に帰ることもできないだろうと夫と義母は考えたんだと思います。それに夫自身が私の両親から逃げたかったのもあるかなと。「虎の威を借る狐」じゃないですが、引っ越ししてから急速に夫の態度が変わりました。バックに母親が付いた安心感から、気持ちが大きくなったのでしょうね。
――他のエピソードも含め、夫やお姑さんの常識外れな行動に憤りつつも、最終的には受け入れる懐の深さがかづさんにはあるように感じました。なぜ受け止められたんでしょうか。
かづ:義母の介護が本格的に始まった頃に息子からも聞かれました。「お婆ちゃんにあれだけいじめられたのになんで面倒を見るの?」と。私は息子に「じゃああんたは、あのここがどこだかもわからない、フラフラ出て行こうとするお婆ちゃんをほったらかしにするママを見たい?」と聞いたんです。すると息子は「見たくない」と即答しました。「ママはひとりの人間である前にあんたたちの親としてどうあるべきかを考えてる。それにお婆ちゃんはママをいじめたことは何にも覚えていない。ママが仕返ししたところで、お婆ちゃんは反省もしない。言ってもしょうがないからよ」と私が答えると息子は納得していました。子どもというのは親が一番身近な大人としての見本な訳で、それもある意味親に対して善人を求めている、というか、善人だと思っているものですよね。
――かづさんがご経験されたような強いエピソードはなくとも、二世帯同居を持ちかけられたりと住む場所について義実家と揉めるというのはよく聞く話だと感じます。もしかづさんがこの問題について今相談されたら、なんとアドバイスされますか?
かづ:実際に友人や読者様から相談されることも多いんですが、「同居は絶対にやめろ」と言っています。近くに住むにしても、歩いて数分ではなく「スープが冷めて乾くような距離」にしろと(笑)。例えば今共働きで子どもの面倒を見てもらえるだったり金銭的な面だったり、メリットがあると思って同居を選択する方もいらっしゃるでしょう。けれど子どもの面倒を見てもらう必要があるのはわずかな期間です。ところが義両親はどんどん助けが必要になってきます。今は制度的に介護に関するサービスも増えてきていますが、子どもと同居している場合はサービスが受けにくい場合も。老後の介護有りきでの同居なんて、よっぽどのお金持ちでない限り無謀です。それも発言権のない嫁に全て押し付ける暗黙の了解の中で夫と義両親が進める同居話なんて、地獄への入り口ですよ。
取材・文=原智香