「小説家志望の妃」に「プロデューサー気質の妹」。型破り姉妹が後宮をかき乱す、超人気・中華後宮ロマンコミックに注目!【書評】

マンガ

公開日:2025/6/15

 中華風の架空の国を舞台にした「後宮もの」の魅力といえば、豪奢な衣装や煌びやかな宮廷、皇帝の寵愛を巡る妃たちの熾烈な駆け引き……華やかさの裏に渦巻く陰謀や愛憎劇が醍醐味だ。

 そんな「後宮もの」ジャンルに一石を投じ、独自の切り口で物語を紡ぐ作品がある。それが『執筆中につき後宮ではお静かに 愛書妃の朱国宮廷抄』(葛井美鳥:漫画、田井ノエル:原作/KADOKAWA)だ。

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 本作の主人公・青楓(せいふう)は、なんと「小説家志望」の妃。後宮入りの理由も「静かに引きこもって創作できるから」という前代未聞のもので、地位や権力、皇帝の寵愛にはまったく興味を示さない。ただただ物語を紡ぐことに命を懸けている彼女のマイペースぶりは、従来の“後宮ヒロイン像”とは一線を画している。

 シリーズを通して描かれるのは、後宮での殺人事件の真相や妃たちの策略だけではない。青楓は、読書によって培った幅広い知識と旺盛な好奇心を武器に、語学を通じて異国の妃と心を通わせたり、幼い妃に学ぶ楽しさを伝えたりと、知性によって後宮の人々とつながっていく。

“戦わずして信頼を勝ち取る”その姿は、従来の“陰謀に抗うヒロイン像”とは異なる、新たな魅力を放っているのだ。

 大好評のシリーズ1〜3巻を経て、物語はついに待望の新展開へ。それが、新シリーズ『こちら後宮日陰の占い部屋  執筆中につき後宮ではお静かに』(葛井美鳥:漫画、田井ノエル:原作/KADOKAWA)である。

『執筆中につき後宮ではお静かに 愛書妃の朱国宮廷抄』の続編となる本作では、青楓の妹・翔夢鈴(しょうめいりん)が登場。巷で話題の占術師は、実は翔夢鈴のプロデュースで…?

 翔夢鈴は怖いもの知らずの大胆さで、新たな視点から宮廷の裏側を暴き出し、物語にさらなる波乱を巻き起こしていく。「後宮×占術」という斬新な要素が加わったことで、従来の後宮ものにはなかったスパイスが効いた展開に。今後のストーリーから目が離せない。

 型破りなキャラクターたちが活躍する本シリーズは、これまでの「後宮もの」とはひと味違う、新しい魅力を持った作品だ。従来の枠を軽やかに飛び越えていくこの物語の、さらなる展開にぜひご注目を。

文=ネゴト / すずかん

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