『龍神と許嫁の赤い花印』コミカライズ最新3巻! 楽しい学校生活を夢見ていたが、派閥争いに巻き込まれ… 『鬼の花嫁』クレハ原作の和風ラブファンタジー【書評】

マンガ

公開日:2025/6/8

龍神と許嫁の赤い花印
龍神と許嫁の赤い花印中野まや花:作画、クレハ:原作/スターツ出版

 愛し愛されているという実感が人をこんなにも強くする。私にはあの人がいる。どんなことが待ち受けていても、ふたり一緒なら絶対に乗り越えていける。そんな運命の恋を描いた物語が『龍神と許嫁の赤い花印』(中野まや花:作画、クレハ:原作/スターツ出版)。『鬼の花嫁』で知られるクレハ氏による和風シンデレラストーリーを、中野まや花氏がコミカライズした作品だ。幻想的な世界観の中で紡がれていく恋の物語に、思わずウットリ。完結した原作文庫本5巻に続き、コミカライズ版第3巻も発売され、ますます注目が集まっている胸キュン必至のラブファンタジーだ。

 主人公は、生まれた時から手の甲に赤い椿の形のアザがある少女・ミト。天界に住まう龍神とその伴侶となる人間を引き合わせるために作られた「龍花の町」から遠く離れた山間の村に生まれた彼女は、幼い頃から村人たちから「忌み子」と呼ばれ、16歳になった今でも虐げられ続けていた。どうしてそんな目に遭わねばならないのか――それは、ミトのアザは、本来は龍神の伴侶の証として祝福されるべきものだが、この村に限っては凶兆の証とされるため。

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 そんなミトの支えは、銀色の髪に紫紺の瞳、この世のものとは思えない美しい顔立ちをもつ、波琉(ハル)という男と過ごす夢の中の時間だった。ふたりは、彼らの間にある分厚い透明な壁をものともせず、交流を深め、ミトはいつしか夢の中で出会った波琉に恋心を抱き始める。

 実は、波琉は実は天界の龍神たちの頂点に君臨する4人の龍神のひとり・紫紺の王と呼ばれる龍神だった。やがてミトの思いが波琉に伝わった時、波琉は夢でしか会えないミトを現実世界でも探し始める。そしてコミックス2巻では、波琉はミトを理不尽な暮らしから救い出し、ふたりは龍花の町へと移り住むことに。

 最初はミトを取り巻く現実の悲惨さに顔をしかめたくなるかもしれない。村ではミトには戸籍すらなく、村人たちはミトをいじめる上に、ミトを愛する両親にも嫌がらせをしてきていた。そんな苦々しい出来事の数々を追いながら、「どうか早く救いが来てほしい」と祈りながら読み進めた先、夢でしか会えなかった波琉がミトと現実でも出会えた時、私たちも思わず、ジーンときてしまう。美しいイラストに思わずため息が漏れ、思い合うふたりの姿にときめきが止まらない。この物語の一番の魅力は、苦さと甘さのバランスの絶妙さにあるのかもしれない。苦々しい現実を乗り越えた後の、ふたりの時間はとびきり甘い。ミトを溺愛する波琉と、そんな波琉に照れまくりのミトの姿に、頬は緩まされっぱなし。こちらまで幸せな気分にさせられてしまう。

 最新3巻では、ミトの高校生活がスタート。これまで村の人々の嫌がらせによって学校に通えなかったミトにとって、学校生活は憧れだったが、ミトの通うことになる高校では、醜い派閥争いがあるらしい。だが、今まで悲惨な生活を余儀なくされていたミトは、人一倍、理不尽なことが許せない。ミトはどの派閥にも属さないことを宣言するのだが、そのことが波乱を呼び……。そんな困難をミトは波琉とともにどう乗り越えるのか。それも見どころだが、やっぱりふたりの時間は激甘。放課後の制服デートにはニヤニヤが止まらない。……ああ、愛し愛されるって、なんて幸せなことなのだろう。このふたりならば、きっとどんな困難でも乗り越えられるはず。時空を超えた和風ラブファンタジー、この甘美でロマンチックな世界に、ぜひともあなたも足を踏み入れてみてほしい。惹かれ合うふたりの物語に、きっとあなたも、運命の恋への憧れを感じずにはいられないだろう。

文=アサトーミナミ

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