自称サバサバ女・網浜奈美は令和の両津勘吉?編集部が語る『ワタシってサバサバしてるから』 【インタビュー】
更新日:2025/6/6

『ワタシってサバサバしてるから』(江口心:漫画、とらふぐ:原作/DPNブックス)。タイトル通り、主人公・網浜奈美 (あみはま・なみ)はこの一言をもって自分ファーストを貫き 、周囲の反応を全く気に留めない。そんな彼女の行動を切り抜いたウェブ上でのプロモーション広告を目にした人々の間で話題を呼び、爆発的に認知度を上げた。
網浜の快進撃の舞台は、出版社、派遣先のアパレル企業、婚活、高校、そして政界。ドタバタのスケールも、読者からの人気度も、網浜の野望の如く着実にパワーアップしてきた。
ただの“スカッと漫画”にとどまらない魅力はどのように生まれたのか、DPNブックス編集部編集長の坪内健一郎(つぼうち・けんいちろう)氏と、担当編集者に話を聞いた。

坪内健一郎
株式会社エムティーアイ
ライフ・エンターテインメント事業本部
music.jp事業部 コミック出版部部長
北海道出身。2006年にエムティーアイに入社。2017年にオリジナルコミックを制作する出版事業「DPNブックス」を立ち上げる。血糖値は高くない。
「自称サバサバ女」は本当に浅はかなだけなのか?
──『ワタシってサバサバしてるから』は2020年の連載開始当初からウェブの広告で話題になり、2025年3月には1億5000万DLを突破。同年5月からは丸山礼(まるやま・れい)さん主演のドラマシーズン2がスタートするなど話題性も尽きません。
坪内健一郎(以下、坪内):今、『ワタサバ』が50話ちょっとあるんですが、単純計算で1話あたり約300万人の読者がいるといえますね。ちょっとした都会の人口くらいはあるんじゃないでしょうか。
──今、検索してみると横浜市の人口は、約380万人ということです。横浜の住人はだいたい『ワタサバ』の読者……と想像するとすさまじいインパクトですね。
担当編集者(以下、担当):2023年のドラマシーズン1は、当時スタートしたばかりだったNHK夜ドラ枠での放送だったので、ちゃんと観てもらえるか、どこまで映像として描けるのか、完成するまで私たちもドキドキしました。毎話必ず笑えるコメディになっていて、ファンの方にも喜んでもらえたのでよかったです。ドラマを観てから原作を初めて読んだという方も増えました。
──ドラマはアドリブの多さも話題です。網浜役の丸山さん然り、原作では絶対に笑わなかったキャラクターがドラマだと網浜を見て思わず笑っていました。
担当:アドリブがすごく多くて、撮影現場でも役者さんが笑いをこらえきれないみたいですね(笑)。
──『ワタサバ』は、「サバサバ女をテーマにしたい」と、DPNブックスから原作のとらふぐ先生に声をかけたのが始まりだと伺っています。
担当:企画を立ち上げた初代担当編集者によると、いわゆる“男らしさ”を内面化し、“女らしさ”をくさすことで“男らしい”自分を持ち上げる「自称サバサバ女」は昔からいて、なぜそんなことをするのか考えたのがきっかけだそうです。「自サバ女」は浅はかだと思われがちですが、果たして本当にそうなのか。その行動原理に興味を持ち、掘り下げてみようとした、と。

──面白い視点ですね。どういった経緯でとらふぐ先生に声をかけたのでしょうか。
坪内:DPNブックスが始まったのが2017年で、一緒に作品をつくってくださるパートナー探しに注力していた頃に、ご縁があり見つけた作家さんです。
担当:とらふぐ先生は女性向けジャンルですでに活躍されていた作家さんです。いつも情報収集をしたり作品を見たりしている、パワフルな方です。
坪内:ずっと何かしら動いてるから、あまり寝てないのではと感じるときもあります。
──『ワタサバ』のお話には、時事問題もしっかりと取り入れていると感じました。
坪内:社会問題にも敏感で、アンテナがとても高い方です。面白くなりそうな要素を次々発見してくださるので、編集部としても心強いです。
──作画の江口先生についてはいかがでしょうか。
坪内:絵柄のかわいさはもちろん、網浜の露悪的な表情を見てもわかるように、老若男女の様々な感情表現を巧みに描ける。とらふぐ先生が本作の作画に直々にご指名するほどの実力派です。
