自称サバサバ女・網浜奈美は令和の両津勘吉?編集部が語る『ワタシってサバサバしてるから』 【インタビュー】

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更新日:2025/6/6

何があっても網浜奈美は成長しない

──自称サバサバ女が登場するお話は、最後には彼女が痛い目に遭うというスカッとしたオチを想定していた読者は多いと思います。特に連載開始当初、光洋出版社(こうようしゅっぱんしゃ)のOLだった頃の網浜はそうですね。

担当:網浜は最初から今までずっと変わっていません。初めから自分ファーストで、自分の心地良さを大切に、自分のためだけに動いています。ただ網浜が置かれる環境によって、周囲の受け取り方が変わり、違う意味を持つのだと私は思っています。

坪内:とらふぐ先生は「網浜はこういう人間だ」と連載当初から徹底して作り込んでいるから、一貫したキャラクターになっています。網浜みたいに、周りにどう受けとめられるか全く意に介さず、自由にふるまうのって現代では難しい。少し間違ったことを言うとあっという間に炎上してしまいます。網浜にはそんな閉塞感を打ち破る爽快感があり、読者の皆様もそれを評価してくださったと捉えています。

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──変化も成長もすることもない網浜がそこにいて、変化しているのはむしろ読者側。

坪内:「こういう人がいてもいいのかも」と感じられるキャラクターですよね。光洋出版社にいたときの網浜は周囲からすればやっかいな人物で、同じように感じた読者の方も多いと思います。でも、同じふるまいが高校教師編では「よくぞ言ってくれた!」と評価される。自分には絶対にできないことをやってくれる存在になりました。

──高校教師編はそれまでのエピソードと少し毛色が違い、シリアスでスリリングな展開が続きます。「網浜がいてよかった」と、さらに網浜を好きになるお話でした。

担当:高校教師編は「一般常識が通用しない閉鎖的な空間を舞台に、網浜が大暴れしたら楽しそう」という、とらふぐ先生のアイデアです。学校は立場を奪われたら、他に居場所を作るのが難しい。生徒や教師の顔ぶれが変わることもなく、仕事を代われる人間もいないから逃げ出すこともしづらい。そんな特殊な空間に網浜がやってくる。おっしゃる通り「異物を排除しなければ」と敵対するキャラクターが現れるので、シリアスな場面が多くなりました。

──編集部から見た“サバサバ”はどんなものでしょうか。

坪内:“サバサバ”と網浜本人は言いますが、とても“ネチネチ”ですよね(笑)。本田(ほんだ)さんが本当の“サバサバ”で、自ら“サバサバ”を名乗る網浜ほど“ネチネチ”なギャップがあるのが、より一層キャラクターを際立たせていると思います。

担当:“サバサバ”という言葉が世の中に出てきた当初は、さっぱりした人柄を表す褒め言葉でした。それが次第に意味を履き違えてしまった人が出てきて、もやもやする人がいる中、そのもやもやとは何かを網浜が体現してくれました。根は “ネチネチ”した網浜ですが、自分を“サバサバ”と定義している。“サバサバ”が何かすらも、自分で決めてしまうのが彼女らしいですよね。

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