WEST. 濵⽥崇裕「悩むのは時間の無駄だから全然落ち込まない」自身の記憶や体験を見つめなおした1冊とは【インタビュー】

あの人と本の話 and more

公開日:2025/7/15

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年7月号からの転載です。

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、濵⽥崇裕さん。

 ミステリー小説を愛読する濵田さん。『記憶屋』は、なかでも深く心に残る作品だ。

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「サスペンスと都市伝説がミックスされたストーリーがとても面白かったですね。この本を、メンバーの桐山(照史)にも紹介したんです。僕があまりに没入していたから、気になったみたいで。彼も一気読みしていました」

 記憶屋の意外な正体がわかるラストにはドキドキしたが、それ以上に濵田さんは、記憶の意味について考えさせられたという。

「記憶が消えても、人は自分自身であると言えるのか。読みながら悩んでしまいました。僕は個人的には、嫌な記憶なら消してしまっていいんじゃないかと思います。僕はむしろ、自力で消しちゃっています」

 辛いことや腹の立つことは、パパッと忘れてしまうのだと。

「悩んでいても時間の無駄かなあと。だから僕、全然落ち込まないし、立ち直りがすごく早いです。嫌なことだけじゃなくて、いいことも記憶していないというか、その記憶にしがみつきません。過去の成功体験を反芻するより、それを乗り越えてもっと先に進みたいと思うんです」

 舞台『歌喜劇/〜蘇る市場三郎 冥土の恋〜』に出演中の濵田さん。2016年に初演されたコメディ作品の第3弾だ。

「『市場三郎』シリーズは、僕の代表作と胸を張って言えます。冥土を舞台にした今作は、いい意味で抜群のくだらなさです。くだらないことを全力でやっている。福田転球さんの脚本は、やっぱりすごいですね」

 市場三郎を演じられたから今の自分があると、濵田さんは言う。

「演出の河原雅彦さんには、徹底的に鍛えていただきました。初演の稽古2日目に僕、号泣したんです。何もできない自分が情けなさすぎて。河原さんは、『濵田君には、年を重ねても活躍できる芯のある役者になってほしい。だから僕は厳しくする』とおっしゃってくださって。おかげで僕は、作品に臨む姿勢を学ぶことができました」

 アカペラ歌唱に心情や情景をのせて物語を紡ぐオリジナルなスタイルも本作の魅力だ。

「今回は歌をさらにレベルアップしたいです。アカペラって本当に怖い。1音目を間違えたら、もうハモれない。ひたすら練習あるのみです。しかもカンパニーが仲良くないと成立しない。舞台では僕らの結束力も楽しんでいただけたらと思います」

取材・文=松井美緒、写真=booro、ヘアメイク=三田彩聖、スタイリング=村田友哉

はまだ・たかひろ●1988年、兵庫県生まれ。アイドルグループWEST. のメンバー。近年の出演作に、舞台『プロデューサーズ』『盗聴』、映画『裏社員。-スパイやらせてもろてます-』、ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』『武士スタント逢坂くん!』『風間公親-教場0-』など多数。

『記憶屋』
(織守きょうや/角川ホラー文庫) 814円(税込)
忘れたい記憶を消してくれるという怪人「記憶屋」。大学生の遼一は、そんなものは都市伝説だと思っていた。しかし、ほのかに想いを寄せていた先輩・杏子が、夜道恐怖症のトラウマと共に、遼一のことを忘れ去ってしまう。他にも周囲で不自然に記憶をなくした人物が現れ、遼一は「記憶屋」の正体を探り始める。

舞台『歌喜劇/〜蘇る市場三郎 冥土の恋〜
脚本:福⽥転球 
演出:河原雅彦 
出演:濵⽥崇裕、朝⽉希和、笠松はる、大堀こういち、⽟置孝匡、⾼⽊ 稟、前⽥ 悟、山岸⾨⼈、シューレスジョー、松之⽊天辺 
東京公演:6月30日〜7月27日(東京グローブ座) 京都公演あり 

●「市場三郎」シリーズ第3弾。毎度恋に破れつつ三田運送会社で働く三郎。慰安旅行の関西ツアーで美しい僧侶・青蓮と出会うが、事故であの世の黄泉の国に着いてしまう。そこには青蓮もいて……。

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