髙石あかり「食べたいから読むわけじゃない」自身のサンドイッチ愛を自覚させた、こだわりのレシピ本とは【インタビュー】
公開日:2025/7/16
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年7月号からの転載です。

毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、髙石あかりさん。
この本を目にした瞬間、満面の笑みで駆け寄ってきた髙石さん。生活雑貨店で出会ってひとめぼれし、今も折に触れて読み返すという。
「お店の棚に、どなたのだろう、誰かが読んだ形跡のある古本が一冊だけポンと置いてあって。運命の出会いだと思いました。なんでこんなに惹かれるんだろう……。何度読んでもたまらなくて。それで気づいたんです。私、サンドイッチめっちゃ好きなのかもって」
料理家らのレシピが掲載されているが、「食べたいから読むわけではないんです」と力を込めて主張する。
「1文字1文字読んで、パンの食感や舌触り、お肉の歯ごたえやマスタードの味を想像するのが楽しくて。もう眺めているだけで幸せ。気分を上げたい時に読むと、グッとテンションが高まります」
この本を通して、食に対する意識も変わったそう。
「料理や栄養の本も読むようになりましたね。体と心の健康は食とつながっていると気づき、自炊を始めるきっかけにもなりました。以前は食事を制限していたけれど、しっかりご飯を食べて運動する方向に考え方を切り替えて。今は周りの人より食べますし、健康になったと思います」
髙石さんの出演映画『夏の砂の上』が公開中だ。オダギリジョーさん演じる伯父・治と、ひと夏の同居生活を送る優子を好演している。
「正直なところ、脚本を読んだ時にはよくわからなくて。監督にそうお伝えしたところ、『最後に治が少し成長しているシンプルなお話です』と言われハッとしました。これまではメッセージを探ろうとしていましたが、どう受け取ってもいい。その自由さが映画なんだと気づきました」
奔放な母親に育てられた優子は、儚さと強さを持つ少女。治との日々を通して、彼女もまた成長していく。
「治が妻と別居していること、かつて子どもがいたことがだんだんわかってきて、治の孤独に触れて。愛を受け取ってこなかった優子に、治への親近感、守りたいという気持ちが芽生えていきます」
完成した作品は、髙石さんにとって特別な宝物になった。
「終盤のシーンを撮影後、オダギリさんに『あれこそ映画だ』と言っていただき、とてもうれしかったです。試写を観ながら、私も出演しているのに『この映画に出たい!』と思ったし、ひとりになった帰り道ではなぜか涙が止まらなくて。本当に大好きな作品ですし、早くまた観たいです」
取材・文=野本由起、写真=TOWA、ヘアメイク=住本 彩、スタイリング=金田健志
たかいし・あかり●2002年、宮崎県生まれ。19年、本格的に俳優活動を始動。主演映画「ベイビーわるきゅーれ」シリーズで人気を博す。25年後期NHK連続テレビ小説『ばけばけ』のヒロインとして出演するほか、Netflix『グラスハート』にもレギュラー出演。

『私のサンドイッチ』
(地球丸)1430円(税込)
パンの種類も具材も人それぞれ。食事に、おやつに、お酒のおつまみにと変幻自在のサンドイッチ。料理家やイラストレーター、愛パン家らが教える59のレシピに加え、名店の一品の裏に隠された物語やパン耳の活用法、サンドイッチに合うスープレシピまで紹介。人柄があふれる十人十色のサンドイッチを、おいしそうな写真とともに味わえる。

映画『夏の砂の上』
監督・脚本:玉田真也
原作:松田正隆(戯曲『夏の砂の上』)
音楽:原 摩利彦
出演:オダギリジョー、髙石あかり、松 たか子ほか
配給:アスミック・エース 7月4日よりTOHOシネマズ他全国ロードショー
●幼い息子を亡くした小浦治は、妻と別居し、仕事にも就かずふらふらしていた。そんな中、姪にあたる17歳の優子を預かることに。雨が一滴も降らない夏の長崎で始まる、治と優子ふたりの同居生活。夏の砂のように乾ききった心に沁み込む一筋の希望の物語。
© 2025映画『夏の砂の上』製作委員会