見た目はJK、中身はシニア? ツッコミが追いつかない“年齢詐称系VTuber”星空バアドがクセになる!【書評】
公開日:2025/6/14

「女子高生VTuber」――いかにも注目を集めそうな肩書きだが、もしもその“中身”がシニアだったとしたら。
『あきらかに年齢を詐称している女子高生VTuber』(なまず/KADOKAWA)は、そんな奇抜な設定から始まるコメディ漫画だ
主人公は、新進気鋭のVTuber(架空)の星空バアド。見た目こそ女子高生だが、その言動は“年齢詐称”どころの騒ぎではない。懐かしのCMネタや昭和歌謡、思わず「いつの時代の話⁉」とツッコミたくなるような発言のオンパレード。そんな“ズレまくり”キャラなのに、なぜか憎めない。そのギャップこそが、この作品の不思議な魅力となっている。
読み始めは「なんでこの人、女子高生を名乗ってるの⁉」と戸惑う。ツッコミどころ満載なのに、どこか親しみを感じてしまうのは、彼女の“必死に若者文化についていこうとする健気さ”がにじみ出ているからかもしれない。しかも本人はいたって真剣に「JKとしての自覚」を持っているというのだから、なおさら面白い。テンポよく進むやりとりと、時にシニカルで、時に優しさを感じるノリは、読んでいてクセになる。
最近では、SNSで「おじいちゃん・おばあちゃん」の配信がバズる時代。孫とのほのぼのとした日常や、若者のトレンドを取り入れる姿、昭和と令和が交錯するユニークな視点がかえって新鮮で、若い世代の心をとらえている。
高齢者のデジタル参加が当たり前になりつつある今、「年齢を超えて楽しむ」という姿勢そのものが、ひとつのトレンドになりつつあるようだ。バアドのように、年齢の壁を飛び越え、ネットの世界を楽しもうとする姿は、時代の空気を映す存在といえるだろう。
視聴者たちはバアドのことを「ババア」とツッコミながらも、そのやりとりには愛情がにじんでいる。いじりと愛が共存するコメント欄には微笑ましい空気が流れていて、まるで孫とおばあちゃんの会話を見ているかのようだ。
ちょっぴり不思議でなんとも愛おしいこの1冊、ぜひ手に取ってみてほしい。