止まらないブルべマウントと自分語り! アイドル気分な友人は、ミスコン出場をきっかけに日常が一変する『ブルベな私が大優勝 勘違い女子大生の末路』【書評】

マンガ

公開日:2025/6/18

 肌や髪の色に基づき、その人に似合う色の系統を示すパーソナルカラー。パーソナルカラー診断でよく耳にする「ブルーベース(通称・ブルべ)」「イエローベース(通称・イエべ)」という分類は、近年ではファッションやメイクの分野で広く知られるようになった。

ブルベな私が大優勝 勘違い女子大生の末路』(リアコミ:原作、マスハタ:漫画/KADOKAWA)は、そんなパーソナルカラーにとことんこだわる女子大生の日常を描いた物語だ。

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 主人公はどこにでもいる平凡な女子大生・まゆ。自分の容姿に自信がない彼女は、美人でスタイルもよい友人・千佳にひそかに憧れを抱いていた。けれど、自分が“ブルベ美人”であることに絶対的な自信を持つ千佳は、何かにつけて「私はブルベだから」と遠回しなマウントを連発。

 さらにはSNSのフォロワーが増えるにつれ、自撮りは過剰に加工、投稿画像は露出多め、発言は上から目線と、周りが見えなくなる一方だ。

 まゆや周囲の友人はそんな千佳を心配し助言するが、千佳はまったく聞く耳を持たない。大学のミスキャンパスコンテストへの出場を決め、当然自分が選ばれると豪語する千佳。しかし、そんな中で思わぬ事態が起こり――。

 本作の見どころは、他人にどう見られるか、どう評価されるかを常に意識しながら生きる女子大生がしだいに他者の価値観に縛られてがんじがらめになっていく様子が、パーソナルカラー診断やSNS上でのイメージ戦略を通して巧みに描かれている点だ。

 承認欲求や優越感、劣等感といった誰もが心の奥に抱える感情が、なにげない会話やSNSの投稿をきっかけに表面化する瞬間はあまりに生々しく、時に残酷ですらある。他者の評価ひとつに依存して自己を形づくろうとする千佳の姿は、SNSが普及した現代を生きる私たちにも思い当たる節がある。

 他人の目を意識するあまり、本来の自分を見失ってしまう恐ろしさをあらためて感じさせてくれる作品である。
 
文=ネゴト / 糸野旬

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