待望の子どもを授かった直後に乳がん宣告…絶望を乗り越え、家族とともに前向きに立ち向かった姿を描いた闘病ノンフィクション【書評】
公開日:2025/6/28

乳がんは40代以降の女性に多く見られる。そう聞くと、30代まではそこまで気にしなくても……と考えてしまう人も少なくないだろう。しかし、40代以上に比べたら少ないが20代、30代でも乳がんを発症する可能性は十分にある。疑わしい症状が現れた際に「まだ若いから大丈夫」と決して思い込まず、本書を参考に行動してほしい。
『33歳ママ、乳がんステージ3でおっぱいにサヨナラします 寛解までのポジティブ闘病記』は、33歳で乳がんステージ3と診断された著者が描いたノンフィクションの闘病コミックエッセイだ。著者は結婚5年目に待望の娘を授かり、幸せな育児生活を送っていた。そんな中、左胸にしこりがあることに気がついたが、当初は乳腺炎だろうと気に留めなかった。しかし、病院を受診すると、がんの可能性を指摘される。
1週間後、精密検査の結果では、しこりは悪性の乳がんで、すでに胸や脇のリンパ節に転移していたことが判明する。ステージ3であり、さらに悪性度の高い「トリプルネガティブ乳がん」、再発率の高い「遺伝性乳がん」でもあるという厳しい診断結果を突きつけられる。
絶望的な状況に、眠れない夜や涙が止まらない日々もあった。それでも著者は、家族とともに治療を乗り越えていく様子を明るく描いている。寛解に至るまでの過程は決して平坦ではないが、乳がんを経験したからこそ気づけた大切なこと、前を向くためのヒントが丁寧に綴られている。
病気は予防できるに越したことはない。しかし突然の宣告を受けたときも、ひとりではないことを知っていてほしい。気持ちだけではどうにもならないこともあるが、希望を持つことで少しずつ前を向くことができるだろう。本作は病気の不安を抱える人や、病名を告げられた人に優しく寄り添い、そして少しでも異変を感じたら迷わず医療機関を受診することの重要性を教えてくれる。
文=ネゴト / くるみ