地味な私の叔父さんは容姿端麗な小説家。似てない2人のかわいすぎる同居生活【書評】
公開日:2025/7/26

叔父と姪っ子の愛に満ちた生活を描いた人気シリーズ『かわいすぎる人よ!』(綿野マイコ/KADOKAWA)。仲良しな2人の交流と、優しさの連鎖を丁寧に綴った物語である。読み終えたときには心がほっこりとあたたかくなり、自分も誰かに優しくなりたいという気持ちが芽生えてくる。
中学生のメイは母を亡くしたあと、母の弟である叔父さんと暮らしている。叔父さんは容姿端麗で街や学校でいつも注目の的。地味と言われる自分の容姿に自信がないメイだが、明るく優しく美しい叔父さんを心から尊敬し、慕っている。一方の叔父さんもまた、素直で健気で優しいメイのことを深く愛おしく思っている。そんな2人のあたたかい関係と穏やかな日常が、本作の中心である。
共に暮らすなかで、お互いの知らなかった面を少しずつ知り、自分自身とも向き合っていく2人。メイは学校生活を通して、さまざまな人と出会い成長し、叔父もまた小説家としての仕事に励みながらメイの保護者として苦悩し、変化していく様子が丁寧に描かれている。
明るく自信に満ちたように見える叔父も、実は人知れず孤独を抱えて生きてきた過去がある。また、仕事に入れ込みすぎて無理をしてしまうなど人間らしい一面もあり、読み進めるほど完璧ではない叔父に親近感が湧いてくる。そんな叔父の心をほどいていくのは、メイの飾らない優しさと、亡き母ゆずりの思いやりである。メイの裏表がない朗らかな行動が、亡き姉のことを思い出させることも。育てているはずの叔父も、実はメイに救われている。そんな支えあう2人の関係がじんわりと心に染み渡っていく。
大きな事件は起こらないが、日常の中で見える小さな変化や心の交流が胸を打つ。メイと叔父さんのやり取りに癒されると同時に、彼らの周囲の人々が、2人の優しい関係に触れて変化していく様子も印象的だ。愛と温もりが溢れた物語を、ぜひ楽しんでほしい。
文=ネゴト / fumi