「お前は俺のシンデレラになるんだ」暴君御曹司の寵愛が運命を変える! ざまぁ×溺愛が爽快な大正ラブロマンス【書評】
PR 公開日:2025/6/16

近年、「嫌なら逃げればいい」「行動しなければ変わらない」と何かと言われ、全てにおいて自己責任が問われる風潮があるように思われる。しかし、渦中にいればそうもいかない場合だってあるのではないか。たとえば、パワハラやモラハラを受けていたら、マインドコントロールによって、「こういうもの」と思い込み、誰かに助けを求めたり、逃げるといった判断すらできなくなってしまっている場合も多いからだ。だが、誰かがその状況に気づき、根気強く一歩踏み出す手助けをしたならば、変われる可能性は格段に上がっていく――。
『暴君のシンデレラ~大正溺愛浪漫譚~』(ナガトカヨ:漫画、ヒトエ真琴:原案/スターツ出版)は、大正時代を舞台に繰り広げられる、家族に虐げられてきた少女と日本一の財閥の御曹司が織りなすシンデレラストーリー。かねてより電子版が公開され人気を博していたが、2025年5月9日、待望の単行本が1~2巻同時発売となった。
本作の主人公は、幼くして母親を亡くし、没落寸前の名家・白星家で継母や妹に虐げられ、女中にまでバカにされてきた少女・白星さくら。さくらの実父と継母の間に生まれた妹の凛子が香坂財閥の息子・香坂巻雄に見初められてからは、その扱いが一層ひどいものになっていた。


そんな中、さくらは父の計らいでドレスを仕立ててもらい、凛子のお披露目パーティーへ出席することとなる。だがそこでも居場所がなく、さくらはただただ、その場の空気に圧倒されていた。

しかしパーティー中に困っていた女性を助けたことで、日本一の財閥の御曹司・黒雪瑛誠と出会い、そこから彼女の人生は急展開を迎える。



黒雪は、凛子の嫌がらせにより笑いものにされていたさくらに手を差し伸べる。そして香坂と凛子に圧倒的な力の差を見せつけてさくらとダンスを踊り、そのまま自宅へ連れ去って――!?


突然の出来事に、最初は「なぜ私が」と戸惑うさくらだったが、「俺に身をゆだねれば、おまえを縛りつけているものから解放してやる」と自信満々に断言し、不安に揺れるさくらを縛る白星家という鎖から解放していく。白星家から離れたい、助けてほしいと願いながらも自分の価値を信じられずにいたさくらにとって、黒雪の強引なまでの救いはどれほど温かく、心に沁みたことだろう。
不安が拭えず自分に自信を持てないと、人は目の前にあるチャンスを掴むことすらできない。でも本当は、誰だって幸せになりたいと願っているはずなのだ。日本一の財閥の御曹司でありながらそうしたさくらの弱さを見抜き、根気強く引っ張り続ける黒雪の姿が、寵愛が、とても頼もしく思えた。

だが、当然妹の凛子も黙ってはいない。さくらが自分よりも厚遇されていることに屈辱を覚え、妬み、婚約者である香坂と手を組んで、あの手この手を使って黒雪との関係を潰そうとしてくる。それでも黒雪は屈することなくさくらを守り、軽く相手の上をいく手口をもってあっさり撃退。実力の差を見せつけていく。


黒雪とさくらの前にはまだまだハードルが立ちはだかりそうな予感。今後のふたりの未来に何が待ち構えていて、どう立ち向かっていくのだろうか? また、2巻の後半では、黒雪がさくらを寵愛する理由も明かされていく。

さくらが「私なんて…」の呪縛から解放され、幸せになる時はくるのだろうか? 黒雪とさくら、ふたりの人生に、また爽快なざまあ展開に、引き続き注目していきたい。
文=月乃雫