消えることのない、過去に父親から受けた虐待の心と体の傷。家族を壊すために必要なのは…【漫画家インタビュー】
公開日:2025/7/17

念願のマイホームを建て、新生活を始めた瀧本一家。しかし、主人公の美咲は父親との確執を抱えたままで、昔のような仲良し家族に戻る気持ちはなかった。唯一心を許せる弟・浩介と共に家を出るきっかけを探していたところ、部屋の壁から不気味な音が聞こえてきて……。漫画家・勝見ふうたろー氏が描く、何かが少しおかしい世界の物語。
生物学者は高校時代の友人が表現した「まるで家って……」という発言を思い出すものの、その先の記憶は曖昧。そして美咲は父親から受けた虐待の傷跡に心も体も苦しみ続けていた。トラウマを隠しつつ、世間が納得する理由で家を出ていくために、美咲は例の生き物を利用しようと決める。
家族との確執と、化け物との絶妙な距離感
――お父さんの目が、なにかに取り憑かれたようでとても怖いです。
このお父さんのアップで振り上げるポーズにするのは、かなり前から決めていました。ただ、ここまでアップにすると顔を描かないわけにはいかず、どんな表情にするか少し悩みましたね。
子どものころの美咲から見たお父さんを考えたとき、怖くて何を考えているのかわからない……それこそ家の形をした何かではありませんが、「人間の形をした別の存在」に見えていたのではと思って。そんなイメージをもとに描きました。
――作品として面白いのは、ホラー現象に悩まされているはずの美咲が、それを利用して家族を壊そうというところかなと。やけに前向きに受け入れていますし。
振り返ってみると、こんな化け物がいる家なのに、結局普通に住み続けているんですよね。特に何もしなければ、向こうから害を与えることもないと思っているのか、今思えば、その距離感がなんとも不思議です。ましてや、この生物を利用して「こいつで人生を取り戻してやる」なんて考えに至るなんてね。
建設作業員が遭遇した奇妙な植物、そして美咲の部屋から聞こえた異音の正体は? 家族の絆をより深めるはずの新居を舞台に、この不可解な物語はどんな結末を迎えるのだろうか。