「家」ともども謎の生物に寄生された両親と暮らすか、姉と生きていくか。弟の答えは?【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/23

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 念願のマイホームを建て、新生活を始めた瀧本一家。しかし、主人公の美咲は父親との確執を抱えたままで、昔のような仲良し家族に戻る気持ちはなかった。唯一心を許せる弟・浩介と共に家を出るきっかけを探していたところ、部屋の壁から不気味な音が聞こえてきて……。漫画家・勝見ふうたろー氏が描く、何かが少しおかしい世界の物語。

 両親とともにいれば不自由のない生活が保障され、同級生からいじめられることもなくなる――。弟の浩介は、そんな現実的な選択をした。美咲は「世界でいちばん愛している」と伝えるが、浩介には響かず、冷たい反応を返されてしまう。

弟の選択で共存という可能性を描く

――両親が得体のしれない化け物になっているのに、浩介はどうして残ることを選んだのでしょう?

単純にまだ子どもの考えというのもありますし、お姉ちゃんと一緒に暮らす未来に対して、希望や興味を持てなかったのでしょう。

――姉の愛に比べると、弟の気持ちはそれほど強くなかったということでしょうか?

そうですね。美咲の親しみや愛情は、浩介にはさほど届いていなかった。美咲の一方通行だったといえます。

――とはいえ、自分も化け物になるかもしれないですよね。このような展開にした意図をうかがえると嬉しいです。

描いている側としては、一緒に出ていく結末だと普通すぎるなと。それにこの化け物というか、こういう生き物と共に暮らすことが本当に不幸なのか?と考えたとき、少し違う可能性を見せるのも面白いんじゃないかと思ったんです。

お父さんとお母さんは無理やり化け物に支配されてしまいましたが、浩介は自分の意思で残ることを選んだので、彼自身は化け物にはなっていないと思っています。つまり、この生き物との共生は可能で、コバンザメが大きな魚と共存するように、この生き物も人間との共生を目的とする一面を持っているのかなと。

こうしたテーマは、一見するとエコロジーやSDGsを象徴するスローガンのようにも受け取られます。そういう考えに賛同して共存を選ぶ人もいれば、美咲のように反抗する人もいるでしょう。それぞれの価値観が多様であり、すべてが同じ重さで描かれることが理想的だと考え、このような展開にしました。

――お母さんは病院でお父さんに恨み言のようなことをいっていたのに、家の生き物に支配されたことで、幸せになったように見えます。家族として行き詰まっていた状況が、こうなることで結果的に幸せを得られたのかなと。

そうですね。脳の一部が操作された可能性はありますが、少なくとも当人たちからすれば、あの場所での生活を通じて幸せを感じ、絆も深まり、良い家族になれたと思えているのかもしれませんね。美咲はかわいそうですが……。

 建設作業員が遭遇した奇妙な植物、そして美咲の部屋から聞こえた異音の正体は? 家族の絆をより深めるはずの新居を舞台に、この不可解な物語はどんな結末を迎えるのだろうか。

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