ある日突然、世界中の水が少しだけ硬くなってしまった。生活はどう変わる?【漫画家インタビュー】
公開日:2025/7/28

世界中の水が突然硬くなった世界。人々は「濡れない生活」を余儀なくされるが、驚くほど早く順応してしまう。1カ月ほどたち、とうとう喉が渇くという感覚すらも忘れたある日、世界は再び元に戻る。すると……。漫画家・勝見ふうたろー氏が描いた日常SFストーリー。
水が突然、液体ではなく、切り分けたりつなぎ合わせたりすることができる固体になった。そして水棲生物は姿を消したが、人間を含む陸上の動物たちは、硬くなった水を体内で循環させて生きられるよう適応していた。まるで最初からそうだったかのように、世界は不思議な日常へと変わっていく。
発想は、あの楽しいあのお菓子から
――「水が少し硬くなる」という発想はどこから出てきたのでしょうか?
お菓子の「ねるねるねるね」からですね。砂糖を主成分とした粉に水を加えて練ると、ふわふわと膨らむ不思議なお菓子です。中に入っているのは水なのに、触っても濡れないし、ころころと転がる。そうして遊んでいるうちに、「水がこんなふうになったら面白いかもしれない」と感じたんです。
――それでストーリーを思いついて、ネームまで切ったのでしょうか?
はい、ネームは切りました。硬くなった水が蛇口からどう出てくるのかや、大量に出した場合どうなるのかといった描写のビジュアルイメージはすぐに浮かびました。ただ、ストーリー自体は具体的にはあまり考えておらず、まずは「この水のビジュアルが面白い」という感覚を中心に描き始めた形です。
――海って、この世界ではどうなっているんですかね?
海は巨大な餅のような水の塊になっています。だから水平線は全然真っすぐじゃなくて、たわんだり波打ったりしています。それで、陸地のあちこちにこの塊がぶつかる音が「ゴン」とか「ドン」と反響している、そんな感じですね。
――この現象がなぜ起きたのか、裏設定みたいなものはありますか?
描いているときは特に意識していませんでしたが、後から考えると、こういう状態の水の中では元のように生活できないだろうなと。水の塊の中に入ると谷間に落ちるように沈んでいって、水中で泳げない生き物たちはどんどん深海に溜まっていったのかな、なんて思います。
ただ、人間はこの水の上に船を浮かべることも難しいと思うので、深海まで行って観測することもできないでしょうし、結果として、急にこうなったタイミングで「いなくなった」と感じる状況になるのかなと。でも、水槽の中の金魚なんかはきっと生き残っているだろうし、細かい設定は難しいところですよね。
変化してしまった水に、人々は戸惑いながらも慣れて順応していく。その姿に、昨日まで当たり前だったことが当たり前ではなくなったら?と、コロナ禍で経験したことを思い浮かべるかもしれない。そして結末まで読んだあなたは、どんな感想を持つだろうか。