『はたらく細胞』作者最新作は、古代中国異能力アクション!神と人が対立する世界で、奴隷の子が能力を駆使し成長する正統派バトル漫画【書評】
公開日:2025/7/7
今、SNS上で話題を呼んでいる作品がある。講談社の『good!アフタヌーン』2025年2月号(1月7日発売)から短期集中連載がスタートした、清水茜の最新作「イエローフレイム」だ。古代中国を舞台にした異能アクション漫画で、読者からは「続きが待ちきれない」「早く紙の単行本がほしい」と絶賛の声が相次いでいる。
前作『はたらく細胞』の完結から4年。清水茜氏が挑む新たなファンタジーの魅力を、最終話掲載直前の今こそ伝えたい。
物語は、紀元前16世紀頃の古代中国から始まる。7年にわたる大日照りに見舞われたある王国では、神に雨を乞う儀式が執り行われていた。為政者たちが異民族の子を生贄に捧げると、雷鳴が響き、巨大な龍のような姿をした神が顕現。しかし、神は人々を救うことなく嵐を巻き起こし、国を沈めてしまった。「神はもはや人を助けてはくれぬ。人の力で生きなくては」――そう呟く為政者。一方で生贄にされた子の一族は、深い怒りと復讐の念を抱く。

時は流れ、紀元前3世紀。始皇帝による中国統一を天地に告げる「封禅の儀」から1年後の世界。奴隷の少年・レイは、自由を夢見て脱走を企てる。


同じ奴隷として働く遊牧民のユルを伴い、夜の闇に紛れて逃げ出そうとするが、見張りに気づかれてしまう。追っ手からユルを助けようと拳を振り上げたその瞬間、レイの身体に突如として稲妻のような光が走る……
本作は、長期連載化に向けたプロトタイプとして制作された。そのため全3回という短期集中連載の形式を取っているが、キャラクター同士の関係が濃密に描かれており、バトルの演出も本連載さながらの迫力がある。1話を読めば、“お試し”を超えた完成度の高さに驚くはずだ。
本作の見どころのひとつが、主人公レイと奴隷仲間ユルの絆だ。ユルは親から引き離された遊牧民の子どもで、まだ幼く、言葉も通じない。そんなユルをレイはずっと気にかけてきた。そしてユルを遊牧民の世界へ帰すため、ともに脱走を試みる。

見張りに見つかりピンチに陥ったそのとき、レイを逃がそうと小さな身体で支配者たちに立ち向かっていくユル。ただ庇護される幼子ではなく、仲間としてともに戦おうとする姿に、言葉を超えた信頼関係が感じられ、読者の感情を強く揺さぶってくる。
神の血を引く者だけが使える「怨念を糧にする力」を得たレイ。その異能を駆使した戦闘シーンは、ダイナミックな描写と迫力ある構図によって圧巻の仕上がりとなっている。とくに見開きを効果的に使ったコマ割りは、思わず息を呑むような臨場感があり、「これは紙で読みたい」と感じる読者が多いのも納得だ。


レイが力に目覚め、反逆の神・共工や「神殺し」のシアが登場してからは、演出の密度がさらに加速する。神が姿を現し、異能と異能がぶつかり合うシーンの連続に、自然と作品世界へ引き込まれていくだろう。全体的にダークなトーンの物語だが、序盤から大きな展開が続くため、ページをめくる手が止まらなくなる。
人と神、支配者と奴隷。過酷な運命に抗いながら成長していく主人公の姿は、まさに正統派バトル漫画の醍醐味といえよう。単行本『イエローフレイム(上)』は7月7日発売予定。清水茜の異能アクション漫画を、ぜひ目に焼き付けてほしい。
文=倉本菜生
