ピュアな恋に潜む危うさがクセになる! ヤンデレ男子の歪んでいるけど可愛すぎる愛情表現を追及【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/23

 最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。

 ピックアップした作品は、甘さと狂気が紙一重のスリリングな恋愛漫画『ウブなヤンデレ』。ヤンデレ男子の危うい恋愛感情を描いた本作は、X(旧Twitter)やpixivを中心に人気が高まっており、14万以上のいいねが集まる投稿も。

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 作者・愛犬ぽちち(@Jb5Olr)さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

 本作の主人公は、清楚で優しい女性・通称「お姉さん」に対し強すぎる想いを抱いている、かなりウブなヤンデレ男子・ゆいとくん。その想いは募りに募って、ついに彼はお姉さんを自宅に“お持ち帰り”してしまう。

 しかしお姉さんのことが好きすぎるあまり何もできない、奥手すぎるゆいとくん。そんな矛盾だらけの彼に対して、はじめは恐怖に震えていたお姉さんは戸惑いはじめて――。

 ゆいとくんの想いはどのような未来を迎えるのだろうか。ドキドキとゾクゾクが止まらない、危うく甘いふたりが紡ぐ日々から目が離せない。

歪んだ愛情表現とピュアな恋愛観を共存させたかった

ーー『ウブなヤンデレ』を創作したきっかけや理由を教えてください。

 もともとヤンデレ作品が大好きで、特に歪んだ愛情から生まれる大人な表現に心を奪われていました。ですが一時期、見過ぎて嫌悪感を抱く時期がありました。そうした描写が出てくるとスン……と虚無になってしまうんです。ヤンデレ作品には大人な要素が多いからこそ、愛するジャンルなのに見られない葛藤が……。

 それでもヤンデレへの愛は揺らがず、心の底でピュアなものを全力で求めていました。この相反する欲求をどう両立させるか悩み抜いた末、『ウブなヤンデレ』が生まれました。

ーーこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

 こだわった点は、暗くなりすぎないことです。犯罪者と被害者という関係なので作風によってはえげつないものになると思うのですが、ゆいとくんの純粋な可愛さやお姉さんの不憫な可愛さを見ていただけたらなと思います。

ーー特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。

 気に入っているのは、物語序盤の「手繋いで、オレと」という台詞があるシーンです。包丁で脅して何を要求するのかと思ったら、手を繋ぐだけっていう。その後のお姉さんの呆気にとられたような顔やコマの割り方も含めて気に入っています。可愛いです。

ーーゆいとくんのヤンデレ的な狂気とピュアさ、そしてお姉さんへの純粋な好意を併せ持つギャップが印象的でした。この独特の人物像はどのような背景から生まれたのでしょうか。

 ヤンデレ作品では、相手が自分の思い通りになると積極的に行動する男性キャラクターが多く見られますよね。これはヤンデレの大きな魅力だと思っていますし、私自身、愛する人を独り占めできる瞬間を描いた場面に強く心を惹かれます。

 けれど一方で、好きな相手に緊張して奥手になって、行動をためらうような純粋な可愛らしさにも以前から深い愛着を持っていました。そこで、ヤンデレの激しさとそうしたウブな要素を融合させたらどうなるか、という着想が生まれました。この発想が、ゆいとくんの人物像の形成に影響を与えているのかもしれません。

ーー設定上、ゆいとくんとお姉さんの関係はかなり危ういバランスの上に成り立っているように感じます。ふたりの絶妙な距離感や力関係を描く上で、工夫された点や葛藤はありましたか?

 特に悩んだ点は、ゆいとくんに包丁を持たせることです。昔ながらのヤンデレ描写でベタすぎるのではないかとも思いましたし、そもそも好きな相手に鋭利なものを突きつける行為は“愛”と呼べるのか? という葛藤もありました。

 ただ、最終的にはそれを描くことで、ゆいとくんがどれだけ強い想いを抱いていたのかを強調できたのではないかと思っています。好きな人に包丁を突きつけてまで欲しかったもの。それが「手を繋ぐこと」だったという点に、彼の純粋さが表れているのではないかと思います。

ーー本作を通じて描きたいこと、伝えたいことはありますか。

「可愛い」がテーマなので、それが伝わってくれたらいいなと思います。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 ゆいとくんとお姉さんのやりとりを長めのページで描いてみたいです。あと、『ウブなヤンデレ』以外にも挑戦してみたい創作がたくさんあるので、それも形に出来たらいいなと思っております。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも『ウブなヤンデレ』を読んでくださりありがとうございます! 今後もふたりを描いていきたいと思っているので、見守っていただけたら幸いです。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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