独特な世界だけど、実はみんな普通の女の子。元舞妓の作者が描く、知られざる花街の日常【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/24

 最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。

 凛とした佇まいと、非日常的な世界が広がる花街。元舞妓である作者・松原彩さん(@AYA_ayayakko)が、自身の体験をもとに描いた漫画『舞妓さんの日常漫画』が、SNSを中心に話題を集めている。総フォロワー数は約6.7万人(2025年5月時点)にのぼり、2025年6月に書籍化された。

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 引退後に「舞妓さんってどんな生活をしていたの?」という恩師のひと言が、本作誕生のきっかけ。創作の裏側や、作品に込めた思いについて話を聞いた。

知られざる舞妓の日常を、コミカルにやさしく描く

 15歳から22歳まで、舞妓、そして芸妓として花街で生きた松原さん。華やかに見えるその世界の裏には、厳しい礼儀作法や上下関係がある。浮世離れして見える世界でありながら、そこに生きる登場人物たちは、実は「普通の女の子」なのだ。

 時に笑い、時に落ち込み、互いに支え合いながら日々を過ごす花街の女の子たち。そんなリアルな日常を、松原さんは自身の体験をもとに、コミカルなタッチで描いている。

花街で学んだことは、自分のやりたいことをやる大切さ

――この作品を描こうと思ったきっかけを教えてください。

 22歳で芸妓を引退し、その後に高校に入学しました。そこで先生に「舞妓さんをしていた頃はどんな生活をしていたの?」と尋ねられ、自分が思っていた以上に舞妓さんの世界が知られていないことに気づきました。SNSで漫画として発信すれば、もっと多くの人に興味を持ってもらえるのではと思い、本作を描くことにしました。

――作品づくりでこだわった点はどこですか?

 凛としていて浮世離れした存在に見える彼女たちも、一人ひとりが「普通の女の子」であることを意識して描いています。漫画を通して、彼女たちを身近な存在に感じてもらえたら嬉しいです。

――特に気に入っているシーンを教えてください。

「一に笑顔、二に笑顔」という話の中で、無愛想な接客をしていた私が先輩に叱られるシーンです。花街では、多くの姉さん方に“人としてのありかた”を指導されました。特に挨拶やお礼はかなり厳しく教えられたんですが、それらは舞妓を辞めた今でも役に立っています。

 漫画では厳しくも優しい姉さん方がたくさん登場しますが、自分で描きながら「やっぱり姉さん方ってかっこいいな〜!」と再認識しています(笑)。

――中学校を卒業後に、舞妓さんを目指したきっかけを教えてください。

 小学生の頃に、舞妓さんのドキュメンタリーを観て憧れたのが始まりでした。その頃はまだぼんやりとした夢でしたが、修学旅行で本物の舞妓さんを見たことが本気で目指そうと思ったきっかけです。

「私、やっぱり舞妓さんになりたい!」って親や先生に話したら、「えっ、本気だったの!?」と驚かれました(笑)。

――舞妓さんの経験で、人生観に影響したことはありますか?

 舞妓という仕事を通して、「自分のやりたいことをやる大切さ」を実感しました。自分で決断したことは、多少のつらさがあっても踏ん張れるものなのかなと。失敗しても自分で決めたことだから他人のせいにせず、自分で反省や改善することができます。その結果、一つひとつの出来事を、自分の力に変えていけたと思います。

――今後の目標を教えてください。

 舞妓さんの日常って、本当にツッコミどころ満載なんですよ(笑)。まだまだ描きたいことがたくさんあります。漫画という形を通じて、多くの方に花街への興味を持ってもらえたら嬉しいです。

──最後に、作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 いつも読んでくださり、ありがとうございます。花街というちょっと変わった世界を生きる「普通の女の子たち」の日常を、これからも面白おかしく紹介していけるように頑張ります。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

取材・文=ネゴトいなり

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