両親のいない3人きょうだいの姿をコミカルに。シビアな現実を明るく乗り越えられるのは愛する家族のため!【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/24

 最新の書籍や人気の漫画作品の情報を発信する「ダ・ヴィンチWeb」。今SNSを中心に話題を集めているホットな漫画を、作者へのインタビューを交えて紹介する。

 ピックアップした作品は『あの子達がまともに育てられるの?』。両親を突然の事故で亡くした3人のきょうだいのささやかな日常を描いた本作は、X(旧Twitter)やpixivなどを中心に人気が高まっており、10万以上のいいねが集まる投稿も。

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 作者・葵日向(@gennkinauma)さんにインタビューを行い、創作のきっかけやこだわりについて語ってもらった。

 本作は、双子のきょうだい・美沙と史郎、そしてまだ幼い妹・千恵美の3人の日常を軸に描かれる。両親を事故で亡くしてから早2年——、派手な外見の美沙と史郎に対し、親戚の大人たちは根拠のない偏見を抱き、誰ひとり手を差し伸べてはくれなかった。

 美沙と史郎は大切な妹を守るため、学校に通いながらアルバイトを掛け持ちし、その合間に家事もこなす怒涛の日々を送る。くたくたに疲れた日も、ちょっぴり落ち込んだときも、すべての苦労を吹き飛ばしてくれるのが、最愛の妹・千恵美の笑顔だ。

 互いに支え合いながら一歩ずつ歩んでいく3人の姿は、家族と過ごすかけがえのない時間の尊さを教えてくれる。唯一無二の家族の在り方を、やさしく、時にほろ苦く描いたハートフルな家族コミックである。

ギャップがあるキャラを通して、本質を見ることの大切さを伝えたい

ーー家族の日常や絆を描こうと思ったきっかけや理由を教えてください。

 普段は恋愛漫画を描くことが多いのですが、たまには違ったテーマにも挑戦してみたいと思い、「家族」を題材にした日常漫画を描くことにしました。

ーーこだわった点や「ここを見てほしい」というポイントを教えてください。

 ほのぼのとした場面と、両親を失った3人のシビアな背景をはっきりと描いており、その“温度差”を意識して表現しています。登場人物の明るさの裏にある事情にも注目して読んでいただけたら嬉しいです。

ーー特に気に入っているシーンやセリフを教えてください。

 第1話の「我が妹は明日から保育園です」というセリフが特に気に入っています。2人がどれだけ大切に妹を育ててきたか、そしてここまで頑張ってきたことが感じられる場面なので、思い入れがあります。

ーー双子のきょうだい・史郎と美沙が派手な外見であるがゆえに親戚から疎まれるという設定には、どのような意図が込められているのでしょうか?

 見た目で誤解されやすい2人を通して、「人は外見だけでは判断できない」「本質を見ることの大切さ」を伝えたかったからです。また、意外性やギャップを持たせることで、読者の興味を引き、物語に引き込む狙いもありました。

ーーシリアスな設定に反して、コミカルで微笑ましいシーンが多いのが印象的でした。シリアスとユーモアをバランス良く描くうえで意識した点を教えてください。

 シリアスな内容に偏りすぎると、読者の心が重くなってしまうと思ったので、史郎と美沙のテンポの良い掛け合いや、千恵美への溺愛を通して、笑いや温かさを意識的に散りばめました。

ーー史郎と美沙は親を亡くして以来、「家族」というより「戦友」のような関係にも見えます。この2人については、どのような点を意識して描かれましたか?

 妹を育てるという大きな責任を一緒に抱えてきたからこそ、2人の間には、言葉にしなくても伝わるような深い信頼関係があります。

 2人にとって妹は本当に大切で愛しい存在ですが、子育てはやっぱり毎日がバタバタで大変なことも多くて。だからこそ自然と助け合う場面が多くなっています。その姿が「家族」というより「戦友」のように見えるのかもしれません。

ーー今後の展望や目標を教えてください。

 今後は、史郎、美沙、千恵美の3人が新しい人間関係の中でどんなふうに変化し、成長していくのかを描いていきたいです。描き手としても、彼らの成長を一緒に楽しみたいと思っています。

ーー作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

 読んでくださって本当にありがとうございます。この作品が、誰かに少しでも温かさや安心感を届けられたら嬉しいです。笑って、時には泣いて、最後には「この家族、いいな」と思ってもらえるような作品を目指して、これからも描いていきます。どうぞよろしくお願いします。

取材・文=ネゴト / 糸野旬

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