あなたの人生を変える一着を。悩める人に寄り添う、パーソナルスタイリストの仕事とは?【書評】
公開日:2025/7/29

自分の服装に対する悩みは尽きない。服装の悩みに寄り添い、的確なアドバイスをくれる頼れる存在——それがパーソナルスタイリストだ。
紅原香さんの小説をコミカライズした『服の魔法をあなたに。』(飯田めしこ:漫画、紅原香:原作、慧子:キャラクター原案/KADOKAWA)では、個人の服装をコーディネートしてくれる専門職・パーソナルスタイリストがクローズアップされる。
アパレルブランドの店長・十野紡希は大のファッション好き。キャリアに悩む中で「お客様の人生を輝かせる仕事がしたい」という想いに気づき、パーソナルスタイリストになるため転職。
紡希は転職のきっかけをくれたパーソナルスタイリスト・有馬祐介のサロンへ入社するが、彼はうらおもてが激しく厳しい性格。彼の気まぐれな言動に戸惑いながら、紡希は多様なお客様と向き合うことになる。本作はそんな2人のパーソナルスタイリストが主軸となる。
普段、人への当たりが強い祐介だが、一度スイッチが入ればお客様の職業・趣味嗜好を細かく分析し、柔軟にコーディネートを提案していく。主人公・紡希も、自己主張が苦手なお客様でも微細な反応を見逃さない。その上で笑顔を絶やさずお客様に寄り添う姿は、頼もしさを感じずにはいられない。
性格の真逆な2人だが、お客様の人物像に深く向き合おうとする姿勢が随所に描かれ、「こんな人に相談できたらいいな」と羨ましく思わされる。2人は相手を知りながら、「お客様自身がどうなりたいか」も優先してスタイリングを進める。この姿勢は本人も自覚していない潜在的な望みを引き出すこともあり、それに気づいたお客様が、どう変わっていくのかも本作の見どころだ。
ファッション好きはもちろん、「自分に似合う服装がわからない」といった悩み、コンプレックスを抱いている人も手に取ってみてはどうだろうか。