耳かき専門店に10種以上の薬を服用している男性客が来店。壮絶ないじめの体験を語りつつも彼が見つけた光とは【漫画家インタビュー】
公開日:2025/7/1

耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。
自己否定の“沼”と戦いながら漫画家を目指すかたわら、「耳かき専門店」で働く主人公。ある日、10種類以上の薬を服用するという男性客が来店し驚かされるが、彼が自分のいじめ体験を語り出し……。
初めは怖いと思った印象が真逆に。その気持ちを表現
――作中でも描かれてはいますが、突然10種類以上の薬を服用していることを明かし、「あげてもいいよ」と言ってきた男性客について、当時の印象や心境を教えてください。
カバンから何種類もの錠剤が出てきて軽いテンションで「あげるよ?」と冗談を言われたときは、ちょっと怖いなと思ってしまいました。精神疾患のための薬を飲んでいる人も身近にいなかったのもあり、どうリアクションしたらいいのか分からず固まってしまいましたね。
――男性が自身のいじめ体験を語るシーンはなかなかにハードですが、描く際に注意したことは何かありますか。
この作品では図らずも重くてハードなシーンを描く機会が多くなってしまったので、読み手的にもあまり長く読まされると疲れちゃうよな……と思っていたので、できるだけ簡潔にシンプルに描くよう心がけていました。
――でもこのエピソードの締めの描写には少しクスッとさせられました。このようなラストにした狙いは何でしょうか。
つらい人生を歩んだお客さんで、最初は錠剤の件で怖いとすら感じたのですが、耳かきをしながらゴッホの話や趣味の話も聞いていくうちに、芸術や日々の何気ない風景に癒やされながら生きている普通の人なのだと印象が変わっていったんですよね。だから読後感もほっこりさせたかったので、ラストはあんな感じになりました(笑)。
やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。