自己否定の“沼”に浸かる漫画家志望と、生産性がない人間と悩む自衛隊員。自己肯定感が低い者同士の会話の先には?【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/2

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 耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。

 自己否定の“沼”と向き合いつつ「耳かき専門店」で働く漫画家志望の主人公の前にやってきたのは自衛隊員の男性客。国のために働く彼が口にした意外な自己肯定感の低さに、驚きながらも主人公は……。

同じ悩みを持つ相手にかけた言葉に込めた思い

――自衛隊員が来店したエピソードですが、ほかにお客さんで珍しい職種の方はいましたか。また、どんな職業の方が多い印象でしょうか。

船乗りのお客さんと何人かお会いしたことがあってビックリしましたね。いろんな港を行き来して荷物を運ぶお仕事らしいです。1人で仕事をするのが性に合っているらしく、「夜の海の上で、1人で見上げる星空は最高だよ」と静かに語ってらっしゃった姿がとても印象に残っています。

1番多かった職業はIT系のエンジニアさんでしょうか。職場に女性が全然いなくて……という方も結構多かったですね。

――自己否定の“沼”に浸かる主人公が、同じように悩んでいるお客さんを励ますシーンはほっこりしました。どのような思いで声をかけられたのでしょうか。

当時は、こんなに自己肯定感が低いのは自分くらいでなかなかいないよな……と思い込んでいたのですが、「みんな自分のこととなると責めてしまいがちなのだな」と自衛隊員さんの悩みを聞いて少し心が楽になったんですよね。だから、自衛官さんにも少しだけでも気を楽にして帰ってほしくて声をかけました。

――キャラクターが動物モチーフというのは雰囲気が柔らかく、エピソード展開ともマッチしていて、とても読みやすい印象を受けます。動物モチーフにした理由を教えてください。

膝枕のシーンを人間の姿で描くと、はたから見て生々しさが強く出ちゃうのかなと思いまして、動物キャラにしてみました。動物たちの耳掃除をしている絵の方が、見たときにほんわかした印象になるかなぁ、と。

 やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。

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