高圧的な妻に召使いのように尽くす男性。だが彼はそれが幸せと言う。夫婦の愛情のカタチに正解も不正解もない【漫画家インタビュー】
公開日:2025/7/6

耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。
漫画家を志すもうまくいかず自己肯定感を削られ、自己否定の“沼”に浸かってしまった主人公。「耳かき専門店」で働く中、高圧的な妻に尽くしまくる男性客が来店した。彼の話を聞いているうちに、主人公は自分の親のことを思い出し……。
両親と正反対の夫婦関係を見て知った、人それぞれの幸せの形
――召使いのごとく妻に尽くす男性を描いたエピソードは、なかなかセンシティブな部分もありますが、漫画にした決め手はなんでしょうか?
私の両親は高圧的な夫に尽くす妻という夫婦だったので、小さい頃から男女の関係ってそういうものなのだと思い込んでいたんですよね。
でもお客さんのお話を聞いて、「逆パターンもある!?」と知ったときは衝撃でした。両親の夫婦像と鏡になっているのも面白いと感じ、漫画にしたいなと思いました。
――夫婦や愛のカタチはそれぞれだとは思いますが、この共依存を描いたエピソードについて、反響はいかがでしたか?
「人間ってみんな完璧ではないでしょ?という気持ちも分かるけど、私はこんな見下してくる伴侶は嫌だな……複雑な気持ち」というコメントをしてくださった方がいましたね。「ほんと私も同意見!!」と頷きまくっていました(笑)。
――この話のクライマックスに出てくる、「人の数だけ『幸せ』の形って違うのかな」という主人公のモノローグは心に響きました。思い切ってお聞きしますが、森民さんにとって、幸せの形とは?
究極の質問ですね!(笑)
どんな生活を送っているとしても「心が自由」であることかなと思っています。どんなに時間があっても物質的に恵まれている人でも、自分はこうすべきではない、こうあらねばならない、という固定観念に縛られている人は全然幸せそうじゃないなと思います。
逆にどんなに時間に縛られていたり貧乏であったとしても、自分の欲求を認められたりそのままの自分を許せたりできる人は、心が自由で幸せなのだろうなと思います。
やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。