「あんたなんか産むんじゃなかった」と親に言われた…でも毒親と分かっていても嫌いになれない子どもの言い分【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/7

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 耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。

 漫画家活動がうまくいかず、自己否定の“沼”に浸かっていた主人公は、「耳かき専門店」で働く日々を送る。その日に担当した客は耳かき動画を見るのが好きという若い男性。施術を始めると「親との縁を切りたくて実家を飛び出してきた」と話し始め……。

親と子。立場の違いで異なるお互いを思う気持ち

――耳あかのたまるスピードに関する内容は興味深かったです。ほかにも耳かきについて小ネタ的なものがあれば教えてください。

このエピソードに出てくるような耳の中をドアップで映しながら耳掃除する動画がYouTuberで大変人気で、そういう動画に憧れて実際にAmazonでスマホ画面とつないで使うタイプのイヤースコープを3000円くらいで買ってみたお客さんがチラホラいたんです。

でも「最初は自分の耳の中をスマホで見ながら耳掃除できて新鮮だったけど、自分の耳の中を見られたとしても自分の耳を掃除するのって方向感覚がつかめないから、やっぱりやりづらいね。1、2回で飽きちゃってもう使ってない」とおっしゃっていた方が一定数いたのが印象に残っています。

自分の耳掃除って、どんなに頑張ってもやりづらく感じる人はいるのだなと思いました。

――キャラクターが優しいタッチで描かれていることもあって、重ための内容も読みやすいですが、描く際に意識しているポイントはどんなところですか?

読んでくれた友人たちからも、そう言ってもらえることが多くてとてもありがたかったです。でも中には「見た目が動物だから逆に感情移入しづらい回もあった」という感想をくれた友人もいて。

たしかにマスコットみたいなキャラばかりだとリアリティがなくなっちゃうなと思ったので、個性が出るように体型や髪型、目など顔のパーツのデザインができるだけ被らないように意識していました。

「あーこういう人いるわ~」と思ってもらえるような(笑)。リアリティとファンシーのバランスを考えながら描いていました。

――親の強すぎる束縛から逃げたけど完全に親を嫌いになれない男性のエピソードは、ある意味納得させられました。ご自身が感じたことと、読者の反響について教えてください。

「親になって、この話は自分も当てはまってないかとドキリとします。本当に親という存在は子にとって“厄介”な存在です」

「自戒の念を込めてリポスト。最後のページは特に」

などのコメントをいただきました。

私は親になったことがないので目一杯、子ども側に寄り添って描いてしまいましたが、親側はこの作品を読んで複雑な気持ちにもなるよな……とも感じましたね。

 やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。

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