アダルトチルドレンとして生きづらさを感じている大人たちへ。自己否定し続ける人とそこから抜け出す人の違いとは?【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/10

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 耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。

 漫画家志望の主人公は自己否定の“沼”と向き合いながら、自分のペースで働ける「耳かき専門店」に勤務する。ある日の休憩時間に同僚と話していると、自己否定沼に浸かっている姿が幼馴染みに似ていると切り出される。

耳かき専門店の裏側と自己否定沼から抜け出す過程のバランスに注力

――自己否定を抜け出せた人と自己否定を続ける人、すれ違いで思い違いをしてしまう人同士のやりとりは、どこか切なさを感じました。耳かき専門店での体験を作品に落とし込む際、どのような順序や過程で制作されていくのでしょうか。

作品に落とし込むときの順序としては、まず1ページ目で興味を持ってもらえてページをめくりたくなるような作り、コマ割りにすることを意識していました(できていたかは分かりませんが……)。

「自己否定沼から抜け出す話」という大きなテーマはベースにありつつも、最初の1~3ページあたりは「耳かき店で働いている舞台裏」をきちんと見せながら絡めていきたいなと思いながら描いていました。

――アダルトチルドレンと診断されたお客さんのエピソードで、言われないと気づかない人がたくさんいることを知りました。漫画の反響で特に印象に残っているものがあれば教えてください。

ずっと読んでくれていた友人が、「漫画を読んでいて私もアダルトチルドレンなんだと初めて気づいた。父がね、不機嫌になると無視や無反応、舌打ちや冷たい態度を日常的にとる人だったの。わざと家族や周りに威圧感を与えていた、いわゆるフキハラ(不機嫌ハラスメント)だったんだなと。だから自分は自己肯定感が低い人間になったのかなと腑に落ちた。私は家族のことが好きだったから、今まで自分が悪いと思い込んで気づけなかった」と打ち明けてくれた話は、今でも心に残っています。気づけない人がやっぱり身近にもいて、多いんだなぁと思いました。

――耳かき専門店の同僚の方がとてもいいことを言っていますが、実在の方がモデルなのでしょうか。それとも何人かを統合して作り上げたキャラクターなのでしょうか。

実際に耳かき店で先輩だった方をモデルにしています。めちゃくちゃヘビースモーカーでしたし、周りからも怖がられていました(笑)。特定されないように他の先輩要素も少し加えています。

数年前、私が漫画家志望だと打ち明けたとき、「早く森民の単行本買わせろよ~」と言ってくださったのが心に残っています。

 やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。

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