耳かき専門店で変われた自分。自己否定の“沼”を自らの足で抜け出そうとしたとき、現れたのは…【漫画家インタビュー】
公開日:2025/7/15

耳かき専門店での勤務経験をオリジナル漫画にしてSNSで発信する森民つかさ(@uouououoza1)さん。自己否定という“沼”にハマってしまっている漫画家志望の主人公が耳かき専門店で働き始め、さまざまな境遇の客たちとの交流を通じて自己否定と向き合う姿と、知られざる耳かき専門店の知られざる裏側を描いた『耳かき専門店で働いて自己否定“沼”から抜け出す話』。著者である森民さんにお話をうかがった。
漫画家志望の主人公は、「耳かき専門店」での経験やそれを漫画にすることで、だんだんと自己否定の“沼”と向き合えるようになってきていた。現状に満足はしているものの商業漫画としては結果が出ず。すると再び自己否定の“沼”に潜む“もう一人の自分”というモンスターが現れて……。
かけがえのない経験が教えてくれた自己否定の沼との向き合い方
――改めて、耳かき専門店で働いた経験は、ご自身にとってどのようなものでしょうか。
「そのままの自分を肯定する力を育ててくれた場所」でした。
皆さんそれぞれの悩みや思いを抱えながら、自分の日々を受け入れて、小さな喜びに目を向けて、時に迷惑をかけたり逆にかけられたりしながら、それぞれの人生を生きる。それでいいんだと学びました。
――自己否定沼のモンスターとの対話は心の奥底に響いていきました。自己否定に悩む人は大勢いると思いますが、何か言葉をかけるとしたら?
「◯◯だから自分には価値がある。◯◯だから自分は生きていていい存在」というふうに捉えると、◯◯がなくなったり崩れたりしたときにひどく脆い存在になってしまうんですよね。だから根拠のない自己肯定が大事らしいです。
「誰かに酷い扱いをされたりたくさん失敗してしまったり迷惑をかけてしまったとしても、心は一瞬ヘコんだり傷ついたとしても、私の価値は変わらない」と、自分に言葉をかけてあげることが大事なようです(いわゆるレジリエンスが高いと言うらしいのですが)。
私もまだまだ修行中の身ですが……自分に優しい言葉をかけて、インナーチャイルドを抱きしめてあげながら、共にぼちぼち生きていきましょう。
――主人公が漫画を描く姿からは熱い想いが伝わってきます。ご自身にとって、漫画とはどのような存在でしょうか。
「言葉にできない気持ちや感情を表現させてくれる存在」でしょうか。この先漫画を仕事にできなかったとしても、趣味でもいいので一生描き続けていけたらいいなと思います。
やる気はあっても自己否定感に悩まされてしまう。そんな自分との向き合い方を実体験ベースに描いた本作。客や同僚など、自分と同じように自己否定感に苦しむ人との交流で得たものとは。耳かき専門店の裏側と併せて、森民さんの変化をご覧いただきたい。