欠航率60%!? 日本一上陸が難しい伊豆諸島の最南端有人島、青ヶ島へ。ハプニングだらけの島旅行コミックエッセイに心が惹かれるワケ【書評】

マンガ

公開日:2025/7/28

 東京から358km。東京都の一部でありながら、圧倒的な自然と隔絶された立地を誇る離島、青ヶ島。伊豆諸島の有人島として最南端にあるこの島は、日本で最もアクセスが難しい場所のひとつと言われている。まず八丈島まで飛行機で飛び、そこからはヘリか船。だが船の欠航率は約6割、ヘリも1日1便9人までという狭き門。計画どおりに辿り着ける保証のない、まさに天候と運に全てを委ねる必要がある。『青ヶ島ハードモード 〜都内の離島に行ってきました〜』(後藤羽矢子/竹書房)は、その青ヶ島を訪れたふたりの女性のハードな旅路を描いたエッセイ漫画だ。

 作者の後藤羽矢子さんは、物語の構想を得るための取材を兼ねて漫画家仲間の松本蜜柑さんと青ヶ島を訪れることに。アクセスの難しさをあらかじめ念頭に置いて計画をしていたものの、到着早々に台風が発生、その影響でしばらく船が出ないというアクシデントに見舞われる。帰る手段がなくなり、ふたりはキャンセル待ちでヘリに乗るための不安な日々を1週間ほど過ごすことになる。

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 それでも、作品から伝わってくるのは不思議と楽しげな空気と、青ヶ島にしかない様々な魅力だ。断崖絶壁に囲まれた島の景観、遮るもののない水平線、地熱を活用した温泉やサウナ。本土の日常とはかけ離れた唯一無二の自然に、読み手はグイグイと引き込まれていくだろう。また、青ヶ島で長い時間を過ごすからこそ生まれる、島の人々や他の旅行者との交流も旅の醍醐味が味わえて楽しい。他にも青ヶ島でしか味わえない島寿司や焼酎といった食文化も描かれており、なんだか青ヶ島に行きたくなってくるのだ。

 本作はただの旅エッセイ漫画ではない。アクシデントも含め、旅とは何か? ということを考えさせてくれる。不便だからこそ、大変だからこそ得られるものがある。旅のハプニングが思い出のスパイスになることを実感させてくれるのだ。読み終わると、辿り着けるかどうかという不安より「とにかく行ってみたい!」という気持ちが勝っているはず。青ヶ島へ行こうと思ったら、ぜひ本書を参考に計画を練ってほしい。

文=ネゴト / fumi

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