夜逃げはスピードが命。普通の引っ越しとの違いを解説【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/10

 漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、悩む日々を送る宮野シンイチさん。そんな時に、特殊な引越し業者「夜逃げ屋」を取り上げたテレビ番組を偶然視聴。出演していた社長を「漫画にしたい!」と本人に直接電話したら、なぜか自分も夜逃げ屋で働くことになり――。DV、毒親、宗教二世信者…さまざまな事情を抱えた人々からの依頼で実際に働き、そこで起きた出来事を漫画にしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)だ。私たちとなんら変わらないように見える人、家庭なのに、一歩踏み入れると見えてくる衝撃的な現実。夜逃げ屋として働く人々の持つ過去。目を塞ぎたくなるような事実から目を背けず、しかし笑いも忘れず、時に温かい言葉に涙する。そんな宮野さん独特の筆致で描かれた本作が生まれた経緯から裏話まで、さまざまなテーマで話を聞きました。

――初めて現場に行った時のことで覚えていることはありますか?

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宮野シンイチ(以下、宮野):漫画にも書きましたけど、最初にパンダのパンを渡されて。「いや今食べても味しないっすよ!」って思ったことは覚えています(笑)。でも怖いけど、この先取材させてもらうことを考えたら絶対通らないといけない道なんだろうなと思って。虎穴に入らずんば虎子を得ず、と腹を括ってもいました。

 現場自体はめっちゃ普通の人だし普通の家なんです。普段その辺ですれ違っている人が被害者かもしれないんだなというのを強く感じました。置いてある家具もどこの家にもあるようなもので、住んでいる人もぱっと見ただけではそのあたりを歩いている人と変わらない。これは今でもすごく思うことです。

――私も何度か引っ越し経験があるのですが、それと比較したらものすごく早い荷造りと搬出で。すごいですよね。

宮野:大変ですが、家電とかは運ばないことが多いですからね。金銭的には持って行った方が良くても荷出しが厳しいし、新しいものを買った方が気分的にもいいと思う方も多いです。家のものを丸ごと移動するわけではないのも普通の引っ越しとは違います。

――荷造り、搬出の作業中に気を付けていることはありますか?

宮野:早くやるのは大前提ですが、アパートとかマンションの場合は物音も気を付けます。作業を事前にお知らせすることができないので、「あの部屋うるさいけど何をしてるんだろう?」と思われた住人の方が管理会社に連絡して、家主に連絡が入ってしまう場合もあるので。一軒家で道が狭いところにトラックを止める場合とかは多少時間がかかっても近くのお家に「何かあったらトラック動かしますんで」と伝えにいったりもします。とにかく早く、かつトラブルがないようにというのはいつも心がけています。

取材・文=原 智香

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