夜逃げ屋で働く人ってどんな人? 夜逃げ屋ならではのやりがいとは【著者インタビュー】
公開日:2025/7/11

漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、悩む日々を送る宮野シンイチさん。そんな時に、特殊な引越し業者「夜逃げ屋」を取り上げたテレビ番組を偶然視聴。出演していた女社長を「漫画にしたい!」と本人に直接電話したら、なぜか自分も夜逃げ屋で働くことになり――。DV、毒親、宗教二世信者…さまざまな事情を抱えた人々からの依頼で実際に働き、そこで起きた出来事を漫画にしたのが『夜逃げ屋日記』だ。私たちとなんら変わらないように見える人、家庭なのに、一歩踏み入れると見えてくる衝撃的な現実。夜逃げ屋として働く人々の持つ過去。目を塞ぎたくなるような事実から目を背けず、しかし笑いも忘れず、時に温かい言葉に涙する。そんな宮野さん独特の筆致で描かれた本作が生まれた経緯から裏話まで、さまざまなテーマで話を聞きました。
――実際の夜逃げ現場についてお伺いします。依頼が来てから現場が組まれるまでの作業は、ほとんど社長がやっていらっしゃるんですか?
宮野シンイチ(以下、宮野):そうですね。最初に本人から話を聞く段階で、やっぱりちょっと変な依頼もあるんですよ。詐欺だったり、こっちに何かしようという魂胆があったり。以前、配偶者のDVから逃げたいという依頼があったんですが、息子は置いていく予定だったんです。でも直前で心境に変化があったみたいで「逃げた後も時々息子にご飯を作りに行きたい」と言われて。こういう場合どうするか、といった判断は社長にしかできないですから。逃げた後に住むところも社長が調べています。
――働いている方たちと宮野さんはどうコミュニケーションを取っていったんですか?
宮野:こっちから話しかけにいくようにしてましたね。挨拶も必ずするし。みんなも社長が気にかけている奴だっていうのはわかってくれていたので、話しかけてきてくれたりもしました。だから現場を一緒にやるにつれて次第に打ち解けていって。
あと夜逃げをした人たちの座談会があるんですが、そこに社員も参加しているのでそこで仲が深まったりもしました。
――働いている人も「ただお金を稼ぐお仕事」という以上の気持ちがあるのかなと、読んでいても、今お話を聞いていても感じました。
宮野:みんな社長が好きというのがありますし、夜逃げした時は顔色も悪くて大泣きしていた人が、座談会で会ったらすごく顔色が良くなって元気になっていたりして。そういうのを見ると嬉しくなります。
取材・文=原 智香