想定外が起きるのが夜逃げの現場。加害者に遭遇したらどうする!?【著者インタビュー】
公開日:2025/7/13

漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、悩む日々を送る宮野シンイチさん。そんな時に、特殊な引越し業者「夜逃げ屋」を取り上げたテレビ番組を偶然視聴。出演していた女社長を「漫画にしたい!」と本人に直接電話したら、なぜか自分も夜逃げ屋で働くことになり――。DV、毒親、宗教二世信者…さまざまな事情を抱えた人々からの依頼で実際に働き、そこで起きた出来事を漫画にしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)だ。私たちとなんら変わらないように見える人、家庭なのに、一歩踏み入れると見えてくる衝撃的な現実。夜逃げ屋として働く人々の持つ過去。目を塞ぎたくなるような事実から目を背けず、しかし笑いも忘れず、時に温かい言葉に涙する。そんな宮野さん独特の筆致で描かれた本作が生まれた経緯から裏話まで、さまざまなテーマで話を聞きました。
――荷物の準備をしている間に加害者が帰ってきてしまうというエピソードもいくつかあります。こういったことはよく起きるのでしょうか?
宮野シンイチ(以下、宮野):時々ありますね。例えばだいたい1時間で帰ってきますと言われても、10分で帰ってくることもありますし。あと加害者が予定より早く出かけてしまうと帰りも早い可能性があるので、当初予定では1時間猶予があると思っていたのが、30分くらいしか時間がなくなってしまったり。もちろん相手に夜逃げのスケジュールを教えることはないんで、向こうから普通に日常を過ごしているだけなんですね。となると予定より早く出たり、早く帰ってきたりは結構起きることなんです。
――加害者と遭遇した時に共通する印象はありますか?
宮野:普段の姿を見ていないのでなんとも言えない部分はありますが、自分のもとからいなくなったら困るから必死ですね。特に自分は働いていなくて夜逃げしようとしている相手が働いている場合は、その人がいなくなったら生活していけないわけで。人間の切羽詰まった瞬間を見ているなと感じます。
――衝撃的な現場も多いと思うのですが、回数を重ねると慣れていくものですか?
宮野:僕の場合は慣れなくて、毎回ショックを受けています。スタッフさんの中には自身も辛い経験をされている方が多いので、現場でフラッシュバックが起きてしまう方もいて。と言っても現場にいる間は気持ちが張りつめているから意外と動けるんですけど、搬出が終わってから車を止めて、吐いてしまったりする方もいます。
取材・文=原 智香