夜逃げする人は増えている? 多い性別は? 多くの現場に入った今、感じること【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/16

 漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、悩む日々を送る宮野シンイチさん。そんな時に、特殊な引越し業者「夜逃げ屋」を取り上げたテレビ番組を偶然視聴。出演していた社長を「漫画にしたい!」と本人に直接電話したら、なぜか自分も夜逃げ屋で働くことになり――。DV、毒親、宗教二世信者…さまざまな事情を抱えた人々からの依頼で実際に働き、そこで起きた出来事を漫画にしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)だ。私たちとなんら変わらないように見える人、家庭なのに、一歩踏み入れると見えてくる衝撃的な現実。夜逃げ屋として働く人々の持つ過去。目を塞ぎたくなるような事実から目を背けず、しかし笑いも忘れず、時に温かい言葉に涙する。そんな宮野さん独特の筆致で描かれた本作が生まれた経緯から裏話まで、さまざまなテーマで話を聞きました。

――今も夜逃げの現場に入られている宮野さんですが、予想していたよりも夜逃げのお仕事って多いと感じますか?

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宮野シンイチ(以下、宮野):多いと感じますね。社長もそう言っています。社長はこの仕事を始めた時、夜逃げの仕事って減っていくと思っていたらしいんですよ。法律が整備されて、夜逃げしたいと思う人自体が減っていくんじゃないかと。ところが実際はむしろ増えているらしいんです。つまり悩んでいる人は減っていないわけで、闇の深い問題だなと思います。

――DVなどの理由から逃げる人が多いということで、イメージとしては女性が男性から逃げることが多いのかなと思うのですが、実際はどうですか?

宮野:依頼自体は社長が受けているので僕も詳細までは把握できていないのですが、男性からの依頼は増えてきていて、今は3~4割が男性らしいです。引き受けた現場を振り返っても、男性からの依頼は増えてきている印象がありますね。女性からのDVでも刃物とか包丁が出てくるケースもあって、一概に「男性の方が力が強いから恐怖を感じない」というものでもないなと思います。

――結構現場に入られていると思うのですが、自分が夜逃げ屋として成長したなと思う瞬間はありますか?

宮野:夜逃げをする人もさせる原因を作った人も、一見普通の方だなと感じることが多くて。潜入感を持ちすぎないと言うか、印象で人を判断するのは危険だなと思いました。夜逃げ屋の経験を積むことで、人を見る目は養えたと自分では思っていたんです。でも先日、僕がすごくお世話になっていた人が離婚したんですが、その原因がDVだったんです。お酒を飲んだら子どもの前でも奥さんをめちゃくちゃに殴っていたと聞いて…。まだまだ人を見る目は養えていなかったですね。

取材・文=原 智香

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