スタッフの半生、同僚との再会…多くの人間ドラマを描いた『夜逃げ屋日記』の今後【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/17

 漫画家を目指すもなかなか芽が出ず、悩む日々を送る宮野シンイチさん。そんな時に、特殊な引越し業者「夜逃げ屋」を取り上げたテレビ番組を偶然視聴。出演していた社長を「漫画にしたい!」と本人に直接電話したら、なぜか自分も夜逃げ屋で働くことになり――。DV、毒親、宗教二世信者…さまざまな事情を抱えた人々からの依頼で実際に働き、そこで起きた出来事を漫画にしたのが『夜逃げ屋日記』(宮野シンイチ/KADOKAWA)だ。私たちとなんら変わらないように見える人、家庭なのに、一歩踏み入れると見えてくる衝撃的な現実。夜逃げ屋として働く人々の持つ過去。目を塞ぎたくなるような事実から目を背けず、しかし笑いも忘れず、時に温かい言葉に涙する。そんな宮野さん独特の筆致で描かれた本作が生まれた経緯から裏話まで、さまざまなテーマで話を聞きました。

――本作には原作者時代にタッグを組んで漫画を描いていたトドくんと再会するエピソードもあります。当時を振り返っていかがでしたか?

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宮野シンイチ(以下、宮野):会う前は怖かったですね。ケンカ別れしたわけではないのでお互いに悪い印象が残っているわけではないんですが、それでも変な緊張感がありました。会ってからもなかなか本題に入れないというか、触れてしまったらそこから変な方向に話が進むんじゃないかみたいな腹の探り合いがありました(笑)。

――本作は夜逃げのエピソードだけではなく、そういったお話だったり、一緒に働いている人のエピソードだったりも描かれていて。それが読み応えに繋がっているなと感じたのですが、構成は最初から決まっていたんですか?

宮野:だいたいそうですね。出てくる人の順番とかは少し前後したんですが、「こういう風に作ろう」というのは最初から決めていました。

――では今後の展望について、お話しできる範囲で聞かせてください。

宮野:あとどれくらい続くか具体的にはまだわかりませんが、もう折り返し地点には来たなと。ゆっくりゆっくり最終回に向かっていっているイメージで今は描いています。僕自身、最初は雑誌連載を目指して出版社さんに持ち込みをしたりもしていたのですがうまくいかず、結局Xに漫画をアップし始めたんです。そこでなぜSNSにマンガをアップすることにしたのかも読んでいただけたらわかるようになっています。そして最後は「自分にとって夜逃げとは何か?」を描いていければと思うので、ぜひ見守っていただけたらと思います。

取材・文=原 智香

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