かつて助けたモンスターが美少女になって恩返し。「次マン」エントリーの異世界学園ハーレムマンガ『「あのとき助けていただいたモンスター娘です。」異世界おっさん教師 突然のモテ期に困惑する』【書評】
PR 公開日:2025/6/27

昔話に、こんな型がある。善良だが恵まれない人間がワナにかかった獣を見つけて解き放ってやると、のちに若いヒトの娘に化けて嫁や養子になり幸せな日々を運んでくる。やがて変化(へんげ)に気づかれた“それ”は正体を明かしてこう言う。「あのとき助けていただいた◯◯でございます」と……。
そんな古式ゆかしい恩返し話のエッセンスを、イマドキの洋風異世界ファンタジーの形でカジュアルに楽しめるのが『「あのとき助けていただいたモンスター娘です。」異世界おっさん教師 突然のモテ期に困惑する』(沖ノ輔/GANMA!)だ。

ハッピーエンドを期待せずにはいられないモンスター娘と先生の学園ライフ
地球でサラリーマンだった主人公・ワシオ が異世界召喚され、務めた軍を退いて約20年。独り身の四十路男となり一介の生物教師の職に甘んじていると、その世界では貴重なエリートともてはやされるモンスター娘たちが次々とワシオ先生の教え子になるべく押しかけてくる。触手うねるタコ娘、多脚のクモ娘、空駆けて火を噴くドラゴン娘……。先生を熱烈に愛する、異形にして見目麗しい少女たちの素性……それはみんな“あの時助けていただいた”モンスターだった!
ヒロインたちは大いなる恩返しを体現するぶん、大いにかわいらしく、大いに優秀で、大いに情熱的なハイスペックキャラである。

最初に再会するタコ子ことクラーケン種のクラウディアからしてインパクト抜群。黒髪の裏に赤のインナーカラーが入ったショートヘアは鮮やかで、優等生ギャルとでも呼べそうな溌溂(はつらつ)とした印象を生んでカワイイことこの上ない。言動もその印象通り元気いっぱいで、無邪気にはしゃぎ、やわらか豊満ボディで密着してくるゼロ距離スキンシップがおっさんには強烈だ。それだけ言うと男に都合がいいヒロインのようだが、スカートの中から伸びてうごめくタコ足が“タコだから柔らかくて絡みついてくる”という納得を先立たせ、エッチなシチュエーションでもイヤらしくはならない絶妙なバランスがある。そこがモンスター娘ならではの味だろう。著者・沖ノ輔氏のスマートな絵柄も、作品の清潔感に良く作用している。

また、ワシオがモンスター娘たちに慕われるだけのことはある人物として描かれるのもポイントだ。学園では低ランクの教師だが、もとは召喚された英雄で軍事経験もある猛者の実力をいざという時に見せる彼は、いわゆる昼行燈タイプのイケオジなヒーローである。
劇中で、「生きることは 与えること」という教えがワシオの口から語られる。彼は過去にモンスターたちのために力を尽くして社会的な立場を失った経緯があり、クラウディアたちのもたらすハーレム展開はいわば与えすぎた者に対する、あってしかるべき報いなのである。そういう関係から、ワシオとモンスター娘のハーレム的な構図はむしろモンスター娘たちの視点を主として、“人を救うヒーローを誰が救うのか”という線で、救われたものたちが救い返そうという、ひたむきな思いを滲ませていく。学園エロコメかつラブコメの味付けを帯びながら、根底はまさに恩返しの物語なのだ。
昔話では、ヒトに化けた異類は恩返し相手と悲しい別れをとげることが多い。けれど、この先生とモンスター娘たちならきっと悪いことにはならないだろう。愛する者の手に吸い付き絡みついたタコ足は、そう簡単に引き剥がされたりはしないのだ。

そんな本作は現在、「GANMA!」オリジナル連載としてWebとアプリで配信中(GANMA!アプリは広告視聴で最新話まで無料閲覧可能)。作品公式のXアカウントでも随時、情報発信されているのであわせて要チェックだ。
文=宮本直毅