スマホによって犯罪が巧妙化している令和。性犯罪や闇バイトから子どもを守るため、42年の警察キャリアを持つ元刑事が対策を伝授!

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公開日:2025/7/2

元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑
元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑秋山博康/KADOKAWA

 学校内での盗撮が深刻化している。2025年6月末、ふたりの小学校の教員が女子児童を盗撮し、画像などをSNS上のグループで共有した事件が報じられ世間に衝撃が走った。子どもを指導する教員による卑劣な犯行は断じて許されるものではない。

 さらに近年は、「子ども同士による盗撮」も増えているという。

 通称「リーゼント刑事」こと、元・徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏の著書『元刑事が国民全員に伝えたい シン・防犯対策図鑑』(KADOKAWA)によれば、2023年に学校や幼稚園で盗撮が行われたのは、わかっているだけで169件。これはコロナ禍前のおよそ8倍の数字だという。

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 当然ながら盗撮は、れっきとした犯罪だ。性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)や各都道府県の迷惑防止条例にあたり、場合によっては軽犯罪法違反や住居侵入罪(刑法第130条)により逮捕されることもある。もちろん学生でも罪に問われる。14歳〜19歳であれば「犯罪少年」として逮捕されることもあり得る。

 罪に問われるのは盗撮だけではない。撮った画像を他人に送ったら「提供罪」、自分のパソコンに保管したら「保管罪」、他の人から送られてきた画像を児童ポルノと知りながら保存したら「記録罪」が成立するという。秋山氏は「送ったヤツも、保存しとるヤツも、もらったヤツも、みんな犯罪者や!」と警鐘を鳴らす。

 子どもが被害にあったら「親は子どもを責めないで話を聞いてあげてほしい」と秋山氏。疑わしい盗撮画像をネットで見つけた場合は、スクリーンショットや URL を控えておくといい。加害者が画像を削除しても警察で復元できる場合があるので、諦めないでと秋山氏は述べる。

 また昨年からは日本でも、未成年の性的な動画の拡散や流出を防ぐ「Take It Down」というサイトのサービスが利用できるようになった。親としては、ただやみくもに心配するだけでなく、このような情報を「万が一の備え」として知っておくことも重要だ。
 
 また、本書では、昨今話題の闇バイトについても実際の事案とともに記されている。

 秋山氏は「闇バイトが広がった背景には、SNSの普及がある」と断言する。X(旧ツイッター)やインスタグラムを通じて、手軽に求人が出されていて、そこには甘い罠が無数に潜んでいるという。秋山氏が取り締まった事例でも、新型コロナウイルスで職を失い無収入になった若者が、SNSで仕事探しをしたことをきっかけに、闇バイトの加害者となったケースが紹介されている。

 手口はこうだ。Xで募集されていた「短時間高収入」「ITの仕事」の求人に興味を持ち応募。すると、秘匿性の高い通信アプリに誘導される。相手は身元確認と称し、運転免許証の写真や両親の情報を求めてくる。これを信じて個人情報を渡すとすぐに「仕事がある」と告げられ、5万円が振り込まれる。その金でスーツや名札などを購入するよう命じられ、警察官を騙る偽IDが送られてきて、翌朝に指定の駅に集合するよう指示される。この段階で彼は異変を察し、「降りたい」と訴えたが、「やらなければ実家に放火する」と脅される。やむを得ず向かった先は、すでに掛け子(被害者に電話をかけ、金銭やカードを騙し取る役割)に騙された高齢女性の家。キャッシュカードを受け取り、実印を求める。女性が印鑑を取りに行った隙に、カードを偽物とすり替え、暗証番号まで聞き出す。続いてATMで現金を引き出す指示がくる。現場には指示係が待機し「50万円以下なら咳1回、それ以上なら2回」と合図を決める。現金を手にした後はコインロッカーに預け、ロッカーのQR コード画像を送信。後で別の運搬役が回収する、という流れだ。

 結局、被害届が出され逮捕となったが、総額1800万円を騙し取った詐欺罪(刑法第246条)と認められ、初犯にもかかわらず懲役4年の判決が下された。

 このように被害者にも加害者にもなりえるツールとなるスマホ。親としては、自分の子どもの身に起こることは想像したくないが、日頃から犯罪の手口や対処法、その背景にあるものを親子で話しておくことが子どもはもちろん、家族を守ることにつながる。知識は最大の盾となるのだ。

 本書では闇バイト、SNSトラブル、サイバーテロ、交通ルール、性犯罪、違法薬物などの話が章ごとにマンガを交えて図鑑形式で綴られている。「家族と話してみようか」「子どもに声かけてみようか」と、大切な人とともに防犯への意識を高める絶好の機会となるので、まさに全国民必読の一冊、である。

文=アケミン

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