『恋するMOON DOG』スピンオフが登場!本当はこの2人が主人公の予定だったと作者が語る、コーギー女子×クール男子【書評】

マンガ

公開日:2025/7/3

犬飼くんのシッポ-恋するMOON DOGスピンオフ-
犬飼くんのシッポ-恋するMOON DOGスピンオフ-山田南平 / 白泉社

 昨年、6年間の連載に幕を閉じた人気漫画家・山田南平氏による『恋するMOON DOG』(白泉社)。満月を見ると犬になってしまうイケメン男子と、彼を受け入れたトリマー女子の物語だ。そのスピンオフとして始まったのが『犬飼くんのシッポ』(白泉社)。本編にも登場した犬飼信幸(ユキくん)とその恋人・尾上志保を主人公にしたストーリーになっている。

 主人公カップルが結ばれたところで終わることが多い少女漫画。しかし『恋するMOON DOG』は「まだ終わってほしくない」という読者の声に応えて連載継続が決定したとのこと。それほど本編に人気があるのは、この物語には恋愛のときめきだけでなく、「相手のそのままを受け止める」という愛の本質が描かれているからではないだろうか。

『恋するMOON DOG』本編はペットショップで働く主人公・律歌がドーベルマンを拾ったところからスタート。そのドーベルマンこそが、満月を見ると犬になってしまうイケメン男子=狛山晃だ。見た目の良さやコミュニケーション力ですぐに恋人はできるものの、“犬になってしまう”という自分の重大な要素をこれまで誰にも受け入れてもらえなかった晁。そんな彼が律歌と出会い、真剣な恋に落ちる姿が描かれる。

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 犬になってしまうことをひとつの個性として受け止め、そのままの晃を受け入れようとする律歌の愛の深さがやがて狛山一族をも変えていく。キュンシーンも満載だけど、家族愛、ペットへの愛、兄弟愛とたくさんの愛が描かれる作品だ。

 そして今回、『犬飼くんのシッポ』の主人公である志保は、ごくまれに犬になってしまう人間が産まれる狛山家の血筋の中でも特に珍しい、犬化する女子。

 変身後のコーギーと同様、人懐っこくエネルギッシュに毎日を過ごす。しかしそんな志保には気になる存在が。

 それが同じクラスの犬飼くん。言葉数が少なく目つきも悪い、だけどイケメンだから目立つ存在の彼を志保は遠巻きに見ているだけ。しかしある日路上で犬化したところで犬飼くんに出会ってしまう。

 実は犬飼くんは大の犬好き。教室では無口なのに、犬にはたくさん話しかけて糖度100%の笑顔を見せる彼のギャップに志保は翻弄されまくる。

 無事秘密がバレずに家に帰れた志保だが、すっかり犬飼くんのことが気になるように。しかし犬飼くんは犬の姿の志保にはまた会いたいと何度も迫ってくるものの、人間の志保にはもちろん塩対応。奇妙な片思いがスタートしてしまうのだ。

最初はこのふたりを主人公にするつもりだったと山田氏が明かすのも頷けるほど、スピンオフではあるものの完全にひとつのお話として楽しめる本作。現時点での一番の魅力はなんと言っても犬飼くんのデレ具合。本編でも物静かだった犬飼くん、心を許した人(犬)にはこんな顔を見せるんだ……というキュンシーンが満載だ。

 志保の秘密はいつバレるのか? 犬飼くんの反応は? と考えると、本編同様シリアス展開がありそうなのもまた楽しみ。かつ本作には本編ラストで結婚した晃&律歌が登場し、家族のその後が描かれることもすでに告知済み。『恋するMOON DOG』ワールドから、まだまだ目が離せない!

文=原智香

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