飼い主の留守中に飼い犬&飼い猫は何してる?元ノラ猫と元保護犬との日常を描いた温かくも切ない日々【書評】
公開日:2025/7/30

元ノラ猫のターと元保護犬のアグのささやかで幸せな日々を描く、『ターとアグのしあわせ日和 元ノラ猫と元保護犬、ふたりは親友』(村上直美/KADOKAWA)。ページをめくるたび、胸の奥がじんわりと温かくなる。
もし、飼っている犬や猫と話せたら……と、考えたことはないだろうか。本作は、ターとアグの飼い主である著者が、「ふたりは飼い主の留守中にこんなやり取りをしているのかも」「もしふたりがこんな出来事に遭遇したら」といった空想と実際の出来事とを織り交ぜながら描いている。漫画の中の世界では、ふたりは手をつないで自由に外へ遊びにいき、人間の言葉で飼い主とおしゃべりをする。仲良しなふたりの姿とやさしいファンタジーの世界観が、読む人の心をどいてくれる。
一方、この漫画は、ただほっこりするだけではなく、ふと胸が締めつけられるような切なさも、そっと潜んでいる。ペットとの日常を単なる「楽しくて幸せなもの」として描いているだけではないのだ。
飼い猫や飼い犬をいつかは見送ることになる飼い主の心情、大切な家族として「絶対に幸せにする」という覚悟、ずっと前に見送った飼い犬・飼い猫との大切な思い出など、犬や猫を迎えて共に生きることから切り離せない切なさも、丁寧に描き出されている。犬や猫を飼っている人は、読み終えたあと、大切な「家族」をぎゅっと抱きしめたくなるはずだ。言葉ではなく抱きしめることで、想いを伝えたくなる。そんな気持ちにさせてくれる。
作者は、ターとアグのことを常に「ふたり」と表現する。それは、ペットという「飼われる存在」ではなく、かけがえのない「家族」としてターとアグを尊重しているからだろう。だからこそ、この漫画は、ふんわりとした絵のタッチから何気ない台詞に至るまで、ひとつひとつがこんなにも温かい。
ときに笑えて、ときに涙がこぼれる。読後には愛おしさが胸いっぱいに広がる。