お風呂の暴君/絶望ライン工 独身獄中記㊽
公開日:2025/7/9

以前は6畳のアパートメントに籠ってもくもくと原稿を書いていたが、近頃外に出かけて原稿をやるのが楽しい。
「ラーメンは救い」は東神奈川の喫茶店で、「弁当の歌」は休日弁当を拵えて飛行機を見に行った羽田空港で、「絶望ばくち地獄」は平塚競輪で負けた帰りに、そして本稿は大井町のスーパー銭湯でそれぞれ書かれている。
何気なく立ち寄った場所で思い立ったやうに殴り書く原稿は勢いがあり、生きた内容になることが多い。
連載を2年近くやっているとだんだんノリというかコツみたいなものがわかってくる。
6畳の部屋で悶々と没頭する原稿も楽しいが、外に出て奔り書くメモのような乱筆乱文はまた別の趣があると感じる。
きっとリアルタイムで体験している内容だからだ。
何がリアルタイムかというと、現在ひとっ風呂浴びてポテサラをアテにハイボールを飲んでいる。
最高に気持ちがええ。
更に言えばこの後マッサージを予約している。
40分で4000円の揉みほぐしコースである。
何故こんなことを書くのかと云えば、こう記しておけば取材費として角川から経費で落ちる可能性がある。
私は狡猾であるから、こういった機は逃さないってわけ。
ちなみにあの手この手で領収証を押し付けてはいるが、経費として認められたことは今のところ一度もない。
角川はシビアで、実にクレバーな企業である。
本当はあつ湯と水風呂で整うアレコレとか裸の流儀とか色々と書く予定だったのですが、なんと今回はこれで終わりなんです。
契約文字数に達していない、そもそも内容が掲載に値しない——
偉い人に怒られそうだが風呂上りゴクゴク飲んで酔っ払っちまったの。
大変気持ちよく書き終えたところで擱筆とし、このまま提出させていただく。
勢いのある、いい原稿ですね。これが掲載されたら私はさながら暴君である。
<第49回に続く>42歳独身男性。工場勤務をしながら日々の有様を配信する。柴犬と暮らす。