不自然な夫の借金。怪しい同僚女まで現れ…。崖っぷちの主人公が1億円稼ぎ、クズ夫に復讐をはたす『夫がゴミだと気づいたので捨てさせていただきます』【書評】
公開日:2025/7/18

結婚とはある種の賭けである。人は時とともに変わるものだ。性格も価値観も、人生観さえも、年月とともに絶えず揺れ動く。「この人なら信用できる」と心の底から感じられる瞬間があったとしても、それが未来永劫続く保証はどこにもないのである。
『夫がゴミだと気づいたので捨てさせていただきます』(ゴルゴンゾーラ:原作、とあじゃぱ:漫画/KADOKAWA)は、破綻した夫婦関係に苦しみながらも、そこから自力で抜け出そうとする女性の奮闘劇だ。
主人公・菜々は結婚して1年の平凡な主婦。夫と笑い合って過ごすなにげない日々こそが彼女の幸せだった。だがある日、夫が前触れもなく衝撃の事実を告げる。
「ごめん、俺会社の金使い込んじゃって」。
金額は300万円。会社にバレればクビは免れないだろう。
混乱と絶望の中、菜々は結婚前の貯金をはたき、消費者金融や知人から借金までして必死に資金をかき集める。だが、試練はそれだけでは終わらなかった。
なぜか突然訪ねてきた夫の同僚・沙耶。彼女は菜々が浮気をし、借金まで作っているとなじる。事実無根の中傷に反論する菜々だったが、その一件を境に穏やかだった日常は一気に悪夢と化していき――。
本作の見どころは、次から次へと押し寄せる理不尽な現実に翻弄されながらも、決して希望を手放さずに立ち向かおうとする主人公の心の強さだ。突如として足元が崩れるような出来事に直面したとき、人は何を頼りに立ち上がるのか。それは、それまでの人生で培ってきた自分自身の土台である。価値観や経験、人とのつながり、苦難を乗り越えてきた自信や喜び――それらはすべて自分の中に蓄積され、有事の際の生きる力となる。
孤独と不安に押し潰されそうになりながらも、過去の経験や内に秘めた強さを支えに踏みとどまる菜々の姿は、同じく他人の裏切りに苦しんだ経験がある人の共感を呼ぶだろう。
今まさに不安や迷いを抱えている人や、夫婦関係に息苦しさを感じている人にこそぜひ手に取ってほしい作品だ。