魔王を倒した勇者の次の目標は「辺境の地獄」開拓!? SNSで話題沸騰中の“新機軸ファンタジー”がついにコミカライズ!【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/7/12

役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます
役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます船野真帆:作画、丘野優:原作、布施龍太:キャラクター原案/スターツ出版

 誰かに称賛されるより、自身の意思を貫く。好きなことで生きる風潮の現代で、勇者像は変わったのか。コミック『役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます』(船野真帆:作画、丘野優:原作、布施龍太:キャラクター原案/スターツ出版)は、波乱の展開で幕を開ける“新機軸ファンタジー”だ。

本作品を試し読み

 本作は、書籍レーベル・グラストNOVELSで大ヒットを記録している小説『役目を果たした日陰の勇者は、辺境で自由に生きていきます』(丘野優:著、布施龍太:イラスト/スターツ出版)のコミカライズ版。1巻の発売後、すぐに重版がかかったほどの人気作。Xの投稿が万バズし、SNSでも話題になっている。

 タイトルにある「勇者」は、ファンタジー作品の主人公として王道だ。平和を脅かす凶悪な“何か”と対峙して、仲間と力を合わせながら世界のために戦う。本作も、例外ではない。ただ、その展開には目を見張るものがある。

 本書では1コマ目から、剣を手にした主人公のクレイが魔王に致命傷を与える。しかし、彼は勇者ではない。勇者パーティーの「荷物持ち」で「ただの村人」でしかないのだ。

 舞台となる世界で彼の持つ「スキル」は、物品の鑑定ができる「鑑定」とモノマネが上達しやすい「模倣」だ。一見、戦闘に関わる才能には見えない。しかし、共に戦った仲間との出会いによって「努力や工夫次第でどんな道も拓(ひら)ける」と悟り、やがては、魔王を倒すほどの力を得た。

 ファンタジーの世界で、その功績がどれほどのものかは想像にたやすい。ただ、クレイはみずからの意思で魔王を倒した名誉をある理由から仲間に明け渡す。

 平和を取り戻した王国から離れて、世界でもっとも危険とされる魔の大地「『辺獄』の開拓がしたい」と言い切り、苦労を分かち合った仲間と別れる彼の生きざまは潔く、遠くで手を振って見送る仲間を背にするその姿は、まさしくタイトルのとおり「日陰の勇者」としての“真の物語”のはじまりを象徴する。

 やがて、凶悪な魔物がはびこる「辺獄」へ足を踏み入れてからも、クレイはさまざまな出会いを重ねる。例えば、「辺獄」に一番近い辺境の村で出会った父子のために、自身の「スキル」を活かして生活に役立つ「魔導具」を作るなど、常に「人のために」として、笑顔を絶やさず我が道を行く彼の生き方には、憧れもする。

 かたや、魔物と対峙する鬼気迫るアクションシーンでは、鋭い表情を見せるクレイも魅力的だ。ほがらかで、カッコいい。自分を貫き、周囲に愛されながら成長する主人公の物語には、不思議と強く背中を押されてしまうのだ。

文=カネコシュウヘイ

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