じっと見つめて表情だけで伝えてくる猫。全長70cm! 大きくて穏やかな愛猫との幸せな毎日【書評】

マンガ

公開日:2025/8/6

 猫と聞くと、自由気ままで気分屋、時にイタズラ好きというイメージを持つ人が多いだろう。だが『あっち こっち ネッチ!』(ぱんだにあ/KADOKAWA)に登場する猫・ネッチは、そんなイメージとは大きく異なる。引っかきもしなければイタズラもせず、穏やかで愛らしい性格の持ち主。『ねこようかい』や『悪の秘密結社ネコ』など数々の猫漫画を手がけてきたぱんだにあさんが描く、ゆるくて癒し系のネッチの姿は、優しさにあふれている。

 全長70cmほどもある大きなネッチは、そのビジュアルだけでも目を引く存在だが、何より魅力的なのは行動のひとつひとつ。ネッチは壁を引っかいたり何かを落としたりしない。何か伝えたいことがあれば、じっと見つめて表情で訴えたり、静かに腕を押したりしながらいやだと伝える。悲しんでいるぱんだにあさんには優しくさりげなく寄り添ってくれる。そんな、穏やかでいい子すぎるネッチの姿がとにかく愛おしい。
 
 また、人懐っこくて甘え上手なネッチは、布団で眠るのが大好き。ぱんだにあさんが仕事中でもおかまいなしに布団へ誘いにくる姿には、思わず顔が緩む。そんなネッチの甘えにほだされて、つい一緒に横になってしまうぱんだにあさんの気持ちにも共感を覚えるだろう。

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 ネッチのしぐさひとつ、ほくろ・ひげ・後頭部などパーツ全てに、ぱんだにあさんのこまやかで深い愛情を感じられ、全ページからその想いがあふれ出ている。宅配業者や病院の先生に褒められて、自分のことのように嬉しくなるというエピソードがあるが、動物と暮らす読者にとって「あるある」と感じるに違いない。 

 そんなネッチは、ぱんだにあさんに保護された、保護猫だ。ネッチの過去や今ここで暮らしている理由を思うと少し心が苦しくなってしまう。しかし、どんな時もネッチの気持ちや幸せを想う作者の姿や、今こうして穏やかな日々を共に過ごすふたりの関係に、きっと胸が温かくなるはずだ。どうか、ネッチと作者がこれからも共に幸せな日々を送れますように。と思わずにはいられない。

文=ネゴト / fumi

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