いつも格好いいヒーローのような幼馴染。彼女に追いつきたい男子高校生の純粋で真っ直ぐな姿に勇気がもらえる! 最新巻ではそんなふたりの関係に変化が…【書評】

マンガ

公開日:2025/7/31

 分け隔てない優しさと強さを持つカッコいいヒーロー。テレビやマンガなどで活躍するそんな存在に憧れた経験は多くの人が持っているだろう。『なつめとなつめ』(空翔俊介/マイクロマガジン社)に登場する男子高校生・不知火棗も、いつも自分のピンチを助けてくれる幼馴染みに憧れており、彼女のヒーローになろうと奮闘する。

 棗は、三白眼のいかつい容貌のせいで周囲に誤解されているものの、実は心優しく、誰よりもひたむきに努力する性格。そんな棗のヒーローは、勉強も運動もできて、誰にでも手を差し伸べる女子高校生・水無月夏目だ。彼女に憧れ、棗は勉強に学校行事に人助けにと自身も「ヒーロー」になるべく日々努力している。ちょっと不器用で空回りすることがあるものの、ピュアで真っ直ぐな姿に、周囲もだんだんと棗への誤解をあらためていく。そして私たちも彼に熱いエールを送りたくなるだろう。

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 一方の夏目は、そんな幼馴染みのことを「既に自分のヒーロー」と感じながらも、時に励まし、時に心配しながら傍で見守っている。幼馴染み同士ならではの信頼感と尊敬し合う関係にも胸が熱くなること間違いなしだ。また、ともに学校生活を過ごす中で、互いへの想いの形が少しずつ変化していく様子も見どころになる。特に最新第10巻では、「友達」「幼馴染み」を超えた、互いの新たな「好き」の形が描かれ、見逃せない展開となっている。

 本作は、誰もが誰かの「ヒーロー」になれるのだと教えてくれる。強くなくてもいい、つまずいても、間違えることがあってもいい、誰かの心を支えようとしたり、守ろうとしたり、傍に寄り添おうとし続ける姿勢こそが「ヒーロー」なのだ。悪と戦い世界を救う、偉大なヒーローになることは私たちにはできない。しかし、すぐ近くにいる大切な人を心の底から想い、その人の「ヒーロー」になることはできるはずだ。

 棗が夏目のヒーローになるまでを描く本作は、そんな勇気を与えてくれる作品だ。

文=ネゴト / 桜小路いをり

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