エキストラで女優気分、マッスルショーで大はしゃぎ… 800万アクセスの人気主婦ブロガー・カータンさんが綴る、50代の楽しい生き方【書評】
公開日:2025/8/6

仕事や子育て、介護に追われているうち気づけば、アラフォー、アラフィフ、はたまたアラ還になっていたという女性は少なくないだろう。「何だか最近年齢を実感して落ち込む」「昔より行動力が鈍っているかも」――そんなことを感じている人に読んでほしいのが、月間800万アクセスの人気主婦ブロガー・カータンさんによる『ビバ 女の古』(カータン/主婦の友社)。「女の子」から「女の古(こ)」になった女性たちに贈る、50代の楽しい毎日を描いたコミックエッセイだ。

2025年、カータンさんは58歳になった。人生100年時代なんて言われるが、そこに立ちはだかるのが健康寿命。健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、日本人女性の平均健康寿命は75歳だから、カータンさんは自身の年齢を考えて、「あと18年しか残っていない」「貴重な一年をムダにしてなるものか」と感じているらしい。ましてや、カータンさんは本書の執筆中に父親と姉を相次いで亡くした。「若いときのように『いつか』『いつか』詐欺はやめ!」「思い立ったら即行動 『いつか』と言ってる時間はもったいないわ 時間とお金が昔よりあるんだから」。そんな言葉に思わずハッとさせられるのは私だけではないだろう。
カータンさんは、その言葉の通り、本当に何にでも挑戦してみせる。憧れの松田聖子のディナーショーに出かけたり、マッスルショーで大はしゃぎしたり、娘の影響で日ハム推し活を始めたり、「着るもの迷子」を解決すべくカラー診断に挑戦したり。特に印象的なのが、エキストラ活動、略して「エキ活」。友人・マリリンさんからの、「退職後に時間とお金に余裕があるおじさん・おばさんたちが部活感覚で老後にエキストラをしているらしい」という情報をもとに、カータンさんもエキストラに挑戦。エキストラとはいえ、同日にレストラン客と囚人役を演じるバイプレイヤーになり、気分はいっぱしの女優。そんな姿に思わずクスッと笑わされつつも、「私も挑戦してみようかな」と思わずにはいられない。この本を読むと、カータンさんのアクティブさに影響されて、何か新しいことを始めたくなってくるのだ。
とはいえ、カータンさんだって、ときには年齢を感じることは少なくない。「女・仲本工事」と呼ばれていたはずなのに後転ができなくなっていたり、たるみで肌がもちもちになってしまったり、口臭を娘に指摘されて凹んだり、夫婦で町中華に行くも昔と違って全然食べきれなかったり、重力に負けている胸の位置が気になったり。そんなエピソードも、カータンさんが描けば、抱腹絶倒。ときに「分かる分かる」と共感させられたり、「何だ悩んでいるのは私だけじゃなかったのか」とちょっぴり安心させられたりもする。
大きな悲しみの果て、毎日を活動的に過ごすカータンさんの姿をみていると思う。毎日をどれだけ楽しくできるかどうかは、必ずしも外の出来事や環境に左右されるわけではない。きっとそれはその人自身の心にかかっているのだろう、と。子育てがいち段落ついて何だか気が抜けてしまった人も、介護に疲れている人も、大切な人を亡くして悲しみに暮れている人も、この本を読めば、きっとカータンさんに元気付けられる。思い立ったら即行動! 歳を取るのも悪いことばかりじゃないかもと思えてくる。
文=アサトーミナミ