仕事の苦労を笑いに変えて。労働にまつわる悲喜こもごもが、ユーモアたっぷりなコミックエッセイに『勤労ロードショー 今日も財布がさみしくて』【書評】

マンガ

公開日:2025/7/31

 仕事やキャリアに迷っている人、自分の働き方にモヤモヤしている人にぜひ読んでほしいのが『勤労ロードショー 今日も財布がさみしくて』(まぼ/KADOKAWA)である。

 本作は、多種多様な職場を渡り歩いてきた作者・まぼさんのリアルな経験が、ユーモアと温かさを交えて描かれたコミックエッセイだ。読み終えると、日夜働く自分を褒めたくなるような前向きな気持ちになれる。

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 作者・まぼさんは、試食販売アルバイトの高校時代からワーキングマザーとして働く現在にいたるまで、さまざまな仕事を経験してきた。蕎麦屋、キャバクラ、ゲイバー、図工教室の先生、設計事務所、船上のバー…。どの職場でもその職場なりの悲喜こもごもがある。そんな勤め人としての喜びや葛藤の日々を描いた、渾身の1作だ。

 新たな仕事を始める時の緊張感や就活の悩みなど、どれにもリアリティがある。思わず「わかる!」とうなずきながら読み進めてしまうだろう。

 普段なかなか触れることのない世界――たとえばゲイバーの空気感や設計事務所の職場事情なども、まぼさんの目線を通すことでぐっと身近に感じられる。どんな仕事にも苦労はあるが、そこには楽しさや人との素敵なつながりもあることが、作中からひしひしと伝わってくる。

 結婚、出産を経て、まぼさんは子育てと仕事の両立に悩みながら、会社を辞めてフリーランスの道へ進む。その迷いと決断には多くの読者が励まされるはずだ。転職に踏み切れない、働き方を変えたい、そんな人たちの背中を優しく押してくれる力がある。

 まぼさんが、過去の経験すべてを糧に描いた本作。きっと、仕事がつらい、職場でうまくいかない、自分のキャリアが不安…そんな悩める誰かの心に寄り添い「あなたの経験は全部意味がある!」と激励してくれるだろう。

 笑えて癒やされて、気づけば元気になっている。働くすべての人におすすめしたい、人生の相棒のような1冊である。

文=ネゴト / fumi

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