異形頭の「地球さん」と人間のラブコメディ。キザなセリフに翻弄される、異色の純愛ストーリーに大注目!【書評】
公開日:2025/8/5

わたしたちが今、生きている星・地球。世界中の人々が知るなじみ深い存在ではあるが、誰もその意思を確かめる術は持っていない。ただ、もし“地球”が物思う存在として、目の前に現れたならば。そして、誰かに“恋”をしたならば――。
SNSで大注目のイラストレーターによる美麗なイラストで描かれる『地球さんはキミに恋してる』(ほしもり/KADOKAWA)は、ごくごくふつうの人間と異形頭の「地球さん」が織りなす異色のラブコメディだ。
平凡な毎日を送っていた主人公が何気なく発した「地球愛してるぞ〜」という言葉を聞きつけて現れたのは、なんと球体の星を頭に見立てて人型に扮した「地球」そのもの。さらに、地球という星の意思を具現化したスーツ姿の「地球さん」は、ただの人間である主人公に恋をした、と話すのだから驚きが止まらない。
人外の地球さんと過ごす奇妙な生活が始まると、今までの平凡な日々は一変。芝居がかったキザなセリフに翻弄されたり、一途すぎるほどの恋心に照れを隠せなかったり。主人公が純真な性格で、いつも地球さんの言動を真に受けてしまうからこそ、彼らの甘々な会話に読んでいるほうもドキドキさせられる。
また、地球さん以外に登場する星たちも個性豊かだ。地球さんに恋をするツンデレな「月ちゃん」や、眩しすぎるほどのポジティブ思考と熱い言動が持ち味の「太陽さん」など、星の特性が活かされたキャラクター造形も魅力的だ。
そして、主人公と星たちとのコメディチックな日常とは裏腹に、地球さんが放つセリフは真理を突くようなものも多い。自然と人類の共存や地球温暖化など、現在進行形である環境問題に関しても、地球さんの言葉を通して読者は現実を顧みることができる。
美しいタッチで描かれる異形頭のインパクトはもちろんのこと、人間らしい感情も仄見える星たちの言動は愉快でしかたない。彼らの恋路を最後まで追ったあと、温かな気持ちに包まれてほしい1作だ。