先輩、社長、取引先…そんなの一切関係なし! 令和の新卒社員が繰り広げるクレイジーなオフィスライフは第2巻に突入! ハイスピードギャグ4コマ『きゃたぴランド2』【書評】

マンガ

公開日:2025/8/4

きゃたぴランド2
きゃたぴランド2きゃた/KADOKAWA

 社会人の前には、様々な壁が立ちふさがっている。人間関係、ビジネスマナー、日々の業務……等々。だがしかし、『きゃたぴランド2』(きゃた/KADOKAWA)で描かれる世界では、そんなものはまったく問題ではない。そこではただ、クレイジーな登場人物たちの奇想天外な日常が繰り広げられている。

 本作はweb漫画家・きゃた氏がマンガアプリ「GANMA!」で連載していた作品を単行本化したもので、「次にくるマンガ大賞2025」にノミネートされるなど、SNSを中心に人気を集めている。主人公「新卒ちゃん」と、彼女を取り巻く個性豊かなキャラクターたちによる奇天烈なギャグの応酬が魅力の作品である。

 息をつく間もなく繰り広げられるギャグの数々。社会人のよくある日常のひとコマを入り口としながらも、その場の中で笑いを喚起するのではなく、むしろ文脈無視のギャグの猛攻によって強引に場を作り変える。こうした場の変換の端緒となるのが、唐突な暴力、銃撃、電流といった、バイオレンスな諸表現だ。

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 例えばこんな話がある。休憩時間のひとコマだろうか。新卒ちゃん(青髪の女性)がテントウムシを触ろうとしたことで、テントウムシが逃げてしまう? あるいは彼女にとびかかってくる? 我々はそんなことを考えながら読み進める。ところが、そうした予測は3コマ目の突然の暴力によって粉々に打ち砕かれる。普通ならありえない展開だ。我々がその枠内で物語を眺めていた「休憩時間のひとコマ」という場が破壊されたのである。

 とりとめのない、まったくもって不条理な展開だが、その意味不明さゆえについ笑ってしまうのだ。こうした構造は、本作を通じて一貫している。

 場の中で笑いを誘うのではなく、場を壊すことによって笑いを誘う。いうならば本作はインモラルなギャグマンガではなく、アモラルなギャグマンガなのだ。それゆえに読み手の予想や期待は常に裏切られ続ける。それもまったく想像もつかなかった方向ヘと。だが我々はどこか突き放された感覚を味わいながらもページをめくる手が止まらなくなり、気づけばこの不条理すぎる笑いにハマっているという、そんな作品である。

文=荒木洋輔

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