オタクすぎる元アイドルが昭和へタイムスリップ。推しとの再会で取り戻すアイドルへの夢【書評】
公開日:2025/8/25

推し活全盛期ともいえる昨今、推しのいる方にぜひ読んでほしい漫画が『アイドルミーツアイドル!』(海野久遠/秋田書店)だ。いつの時代も変わらないステージで輝くアイドルの魅力とアイドルを応援する楽しさを再認識できるだろう。
小学生の頃、テレビで見つけた昭和の歌謡アイドル・四方井琴乃こと「琴ちゃん」に夢中になった愛ヶ沢なも。芸能界を既に引退している琴ちゃんの推し活に骨を折りつつも、長年一途に応援し続けてきた。なもは大人になり、やがては自身もアイドルとなる。だが、地下アイドルとして5年。グループが解散するなど、琴ちゃんのようなアイドルとは程遠い日々が続いていた。
アイドルの夢を諦めた矢先、立ち寄った神社でなもは琴ちゃんのいた昭和にタイムスリップしてしまう。
昭和のアイドル文化は現代と大きく異なる。SNSもなく、情報源は主にファンクラブ。ライブは百貨店の屋上で開催され、老若男女が集まり、親衛隊と呼ばれるファン組織の存在も。現代のアイドル文化に馴染んでいる身からすると、新鮮なことばかりだ。だが時代が変わっても、ステージに立つアイドルの眩しさは変わらない。ステージ上で輝く琴ちゃんを見て、観客の目が輝く様子に、どの時代のファンも味わう“推しに恋する瞬間”を強く実感する。
なもはアイドルであり、オタクでもある。作中で溢れ出す琴ちゃんへのアツすぎる思いや、オタク全開の言動、推しを目の前にして頭が真っ白になる様子には、「あるある」と共感しながら、思わず笑ってしまう。一方で、推しを心から応援したい・推しの良さを知ってほしいという真っ直ぐな気持ちは、アイドルを経験していたからこそ湧き出るものなのだろう。自分自身を「偽物のアイドル」だと卑下するなもだが、アイドルへの真っ直ぐな想いがあり、読者を虜にしてしまうなもは、間違いなく本物のアイドルだと感じる。
昭和で琴ちゃんと実際に関わりながら、諦めたアイドルの夢を再び見つめ直し、歩き出していくなも。琴ちゃんに人生を変えられたなもが、また別の少女を釘付けにする日がくるのだろうか。これからも、なもに全力のエールを送り続けたい。
文=ネゴト / fumi