「いなくて当たり前」と家族に蔑まれた娘が継母に…! “無能”令嬢が新しい家族からの溺愛と幸せを手に入れる『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』【書評】
PR 公開日:2025/8/8

『無能な継母ですが、家族の溺愛が止まりません!』(つるこ。:原案・脚本、SORAJIMA:制作)は、「タテ読みマンガアワード2024」国内作品部門で堂々の第1位に輝いたハートフルファンタジー作品だ。鮮やかなフルカラーで描かれる心温まるストーリーと魅力的なキャラクターが織りなす家族の絆が数多くの読者を虜にしている。

公爵令嬢のエルシャは、実の家族から「いなくて当たり前」と蔑まれ、十分な教育も受けられずに育った。そんな彼女に皇帝からアイスベルグ大公ロルフとの結婚命令が下される。ロルフは隣国との戦争で英雄として名を馳せる一方、「戦争狂」と恐れられている人物。絶望的な気持ちを抱えながらも、新たな家族との幸せを夢見て大公城へ向かったエルシャを待っていたのは、前大公の息子である幼いウィルバートとヒューだった。
気難しいウィルバート、言葉を話さないヒュー、そして冷徹なロルフ。エルシャは彼らと心を通わせるため、継母としてひたむきな優しさと強い意志を持って奮闘する。そしてその姿勢が冷え切った家族の心を少しずつ解きほぐしていく。
本作の魅力は、家族愛を軸にしたストーリーと個性豊かなキャラクターにある。当初、兄のウィルバートは大人びた口調で家族を守ろうと心を閉ざしていた。エルシャがそんな彼と親しくなるため、好物であるキャロットケーキを手作りし振る舞う場面は、ウィルバートの亡母との思い出を呼び起こし、硬い表情がほぐれる感動的な瞬間として描かれている。

第2巻では、弟のヒューが失くしたぬいぐるみを探すエピソードを通じて、彼の愛情への渇望と純粋な優しさが描かれる。ぬいぐるみを見つけた後、大きな緑の瞳を輝かせてエルシャに甘えるヒューの姿は、読者に深い愛おしさを感じさせるだろう。
「戦争狂」と恐れられるロルフも、エルシャと過ごす中で不器用ながら家族への深い愛情を見せる。出会って間もないエルシャの子どもへの献身さを認め、子どもたちと共に過ごす時間を作ったり、突如、訪問してきたエルシャの妹からヒューを守った彼女に感謝を伝えたりする姿からは、世間の評判とは裏腹な彼の優しさが伝わってくる。

最初は警戒していた彼らがエルシャを受けいれていくのは、彼女の純粋な優しさと諦めない姿勢が彼らの心を動かしたからに違いない。実の家族から愛されなかった彼女だからこそ、新たな地で「本当の家族」を築こうとする姿は、読者の心を強く揺さぶるだろう。
またロルフと前大公との関係や、エルシャの実の家族の思惑についても第2巻時点では詳細に描かれておらず、今後の展開に期待せずにはいられない。
バラバラだった家族が互いを理解し、絆を作っていく様は、家族の大切さを改めて感じさせる普遍的なテーマであり、鮮やかなビジュアルと相まって幅広い読者に響くはずだ。キャラクターたちの心温まる交流を楽しみつつ、家族愛の深さを味わいたい人に強くオススメしたい一作だ。