司書の先生とほぼニートなフリーターが急接近。図書館からはじまる大人のゆるキュンBL【書評】
公開日:2025/8/22

『ほぼニートな俺が司書の先生に恋をしました』(福田まきこ:漫画、伊藤あまね :原作/KADOKAWA)は、物腰やわらかな小学校の司書教諭と内気なフリーターの青年が織り成すゆるキュンBL。心温まるピュアな恋模様を、ずっと見守っていたくなる作品だ。
フリーターの海老川泰吾は、アルバイトをしながら幼い弟を育てている青年。いつも人の言葉の裏を想像してしまう、気弱な性格だ。一方、弟の通う小学校の「図書ボランティア」で出会った浜田勇魚は、優しく穏やかな性格の司書教諭。下の名前がクジラを意味することから、子どもや保護者から「クジラ先生」と呼ばれている。クジラ先生の優しさにくすぐったさを覚えていた泰吾だったが、ひょんな出来事から急接近。その日を境に、段々と先生のことを恋愛対象として意識するようになる。
自分から心を閉ざしてしまっていた泰吾は、クジラ先生との関わりを通じて、心をほどいていく。同時に、彼の中に芽生えた恋心も、ゆっくりと育っていく。そんな様子を、本作は包みこむような温かさで描いており、丁寧な筆致も魅力のひとつだ。心理描写はもちろん、ささやかな台詞のひとつひとつにも、繊細な優しさが滲んでいる。
また、本作の中で印象的なのは、クジラ先生の人となりだ。余裕のある大人に見えてどこかピュアで、泰吾のちょっとした表情の変化すら察知して心を配れる、優しい心根をもっている。その言動のひとつひとつに見え隠れする先生の包容力に、読者も泰吾と一緒にキュンとしてしまうだろう。
本作は、ゆっくりと小さな歩幅で進んでいく、ピュアな恋模様を見つめたい人にぜひ手に取ってみてほしいBL漫画だ。ページをめくるたびに読者の心もじんわりと温もり、胸の奥に優しい明かりが灯ったような気持ちになるだろう。読み終えたあとには、きっと「もっとこの2人の関係を見守っていたい」と思うはずだ。